産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から 看取りのリスクと特養の決意

 今週の連載「特養での看取り」では一体、何カ所で取材を断られただろう。「看取りをしていますよ」と、最初は乗り気の特養も、「老衰以外のケースでも看取れていますか」と聞くと、口をつぐんだ。

 「特養は福祉施設ですから、看取りを求められても…」「モルヒネを保管できないから、がん患者などは看取れません」。特養側は「看取れない理由」を挙げる。だが、調べると、必ずしも克服できないものではなさそう。医師は往診に来られるし、モルヒネも入所者に処方する形で管理可能だからだ。

 「なぜ、できないんでしょうか」。食い下がると、ある施設長はこう打ち明けた。「看取りはトラブルも多い。夜間に医師や看護師がいないような状態でリスクは負えないよ」。制度のサポートは十分でなく、リスクも高い。そんな中で、施設としては看取りに積極的になれないのだ。

 加えて、最善を尽くしても、看取れないケースが多いのも事実。入所者を家族のように思うスタッフにとっては、歯がゆさの連続だろう。取材させてくれた施設は、そんな現状を何とかしたいと、身を削る思いで話してくれたに違いない。

 看取りに積極的な施設の職員はみな、「できる限り、看取れるようにしたい」と話す。本当は「必ず最後までお世話します」と言いたいのだろう。だが、私にはかえって、強い決意がにじんでみえた。(佐久間修志)

(2008/11/28)