産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から 悪徳退治にわらわらと

 悪巧みではない。取材だ。けれどもインターホンを押そうとして、その脇の「悪徳商法お断り!!」と書かれたプレートに躊躇(ちゅうちょ)してしまった。

 ここは伊賀流忍者の古里、三重県伊賀市。忍者ならぬ「悪徳バスターズ」が悪徳商法撃退に活躍していると聞いてきた。城下町を歩くと、各戸に同じプレートが張られている。手裏剣マーク入りで、8センチ×10センチのサイズは目立つ。消費生活センターや警察署の名称も記載され、街ぐるみで警戒する雰囲気だ。

 これはバスターズの証しなのか。インターホンを押して聞こうかと思ったが、見知らぬ人間は警戒されるに違いない。そう思ってやめたあたりが、術中にはまったらしい。

 プレートは、伊賀市社会福祉協議会が配布し、絶大な効果を上げているという。平井俊圭事務局長は「訪問販売が激減しました」。悪徳業者にすれば、あちこちの玄関からバスターズがわらわらと出てくる気がするのだろうか。

 静かな城下町でも、被害は後を絶たない。大阪のベッドタウンとして発展したが、今は高齢化し、日中、自宅にいる高齢者は標的となりやすい。

 高齢者の生活を支えるため「地域の助け合い」が必要とされるが、近所付き合いが希薄な現代では、難しく考えがち。しかし、プレート1枚でも、皆で掲げれば助け合いになる。「ここでは、みんなが悪徳バスターズ」と。(寺田理恵)

(2008/12/05)