産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から 青年社労士の憤り

 がん患者の障害年金請求の取材で、社会保険労務士らが一様に、怒りをあらわにした事例があった。千葉県の女性のケース。女性の夫は亡くなる3カ月前、「家計の支えに」と、痛みを押して自らサインし、障害年金の手続きを始めた。しかし、肝心の診断書が主治医から返ってこなかったのだ。

 女性は病院に催促したが、「なしのつぶてだった」という。手続きが完了しないまま夫は亡くなった。話を聞いた社労士らは「患者の権利を著しく損なう義務違反行為だ」と憤る。

 医療機関の職員らの社会保険や労務管理をする浅見浩さんは社労士開業3年目の若手。「病院は障害年金への認識が低いうえ、書類業務の増加に人手不足が輪をかけ、混乱気味なのは確か」という。女性の住む地域では、最近も公立病院が閉鎖された。女性の夫が治療を受けた病院は、同地域で2つしかない大病院のひとつだ。

 しかし、浅見さんは「病院の人手不足を嘆いても、状況は改善しない。病院で労務管理をする顧問の社労士が、患者へのサービスが向上するよう、病院側に注意喚起することも可能だ」と指摘する。

 浅見さん自身、今後、病院職員に手続きの重要性を伝えたり、患者への無料相談などを提案したいという。千葉県の女性の無念が、青年社労士には大きく響いたようだ。(北村理)

(2008/12/12)