産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から 「国生み」の里の人の言葉

 「子供を産みたい」(大分県姫島村の介護職員)

 「安心して子供を産んでほしい」(全日空本社の人事部長)

 ワークシェアの取材で、同じ思いが取材相手の口をついて出た。場所も立場も異なるが、自分の属する村や、会社の同僚への“共感”がありそうだ。

 姫島村では、過疎化防止の一環として雇用対策があり、人が定着するように育てる。冒頭の介護職員は生活の糧を得て、将来に希望を感じ、姫島に根付き、子供を産み育て暮らしていくことに存在意義を見いだしていた。

 一方、全日空は長時間労働の解消などに取り組む。社員の半数を占める女性の声に耳を傾けた人事部長は「男性の発想で作った制度が、いかに出産や育児をする女性の働き方に合っていなかったかを知った」という。

 利用者に接する機会が多い女性社員は、全日空の顔。産み育て、仕事も両立したい女性たちをサポートできれば、全日空の伝統維持にもつながる。

 姫島村の藤本昭夫村長は「組織であれ、地域であれ、伝統維持には、人々の共感こそが重要だ」と主張する。かえす刀で派遣切りをした企業を批判する。「正月前に人々の糧を奪うとは言語道断。彼らの生活に思いをはせていない。日本社会の解体に手を貸すに等しい」

 神話に記された「国生み」の里の人の言葉が重く響く。(北村理)

(2009/03/06)