産経新聞社

ゆうゆうLife

編集部から “天敵”にさらされる独居高齢者

 独居高齢者を取材するたび、悪質訪問販売が話題になる。

 「屋根を直せ。シロアリを駆除しろ。りんごを買え、みそを買えと言って、次から次へと人が来ました」

 高齢女性5人が暮らす滋賀県余呉町の「結いの家羽衣」では、住人のひとりが、ひとり暮らしをしていたときの気苦労を、こう話していた。

 「インターホンでしか、しゃべらなかった。『若い人は、いるんか』『怪しいもんやない』といわれると怖くて」

 言葉巧みに欺すのではなく、明らかに怪しい。東北の山村を訪ねたときも、「おばあさんしか家にいないと分かると、脅しにかかる」と聞いた。過疎地では、消費生活センターなどの公的な相談機関が近くにない。

 被害は女性ばかりではない。高額のローン契約を結んだ男性は「5〜6人で押しかけてきて、半ば脅すように、強引に話を進められた」と経緯を話す。

 悪徳商法の被害者は、認知症などで判断力の低下した高齢者と思われがちだが、判断力があっても、断れる雰囲気ではないようだ。昼間ひとりで家にいるとターゲットになる。

 介護を必要としない高齢者宅には、訪問ヘルパーやケアマネジャーの出入りもないから、被害が発覚しづらい。

 独居高齢者は、介護保険では解決できない生活上の不安を抱えている。ひとりで生きるのは勇気の要ることだ。(寺田理恵)

(2009/04/03)