産経新聞社

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お産を守る 進む助産所の整備(上)

院内助産所で、家族立ち会いの下、出産した女性(中央)=東京都渋谷区の日赤医療センター(瀧誠四郎撮影)


 ■伸び悩む中、神戸で増加

 産科医が減り、地域に出産場所がなくなるなか、助産師が担い手となるお産が注目を集めています。厚生労働省は昨年から、助産所に医療機関との連携を義務づけ、安全を担保することで助産師の積極活用を進めています。(北村理)

 神戸市では昨年以来、お産を扱う有床助産所5カ所が開業を申請した。昨年、助産所が開業する際には嘱託医を確保することや医療機関との連携が義務づけられて以降、「全国的には増える状況にない」(日本助産師会)。そのなかでは希有な自治体だ。

 石村朱美さん(60)も仲間の助産師と5月、有床助産所を開業する。開業が増えている理由について、「神戸市では、必ず連携してくれる医療機関があるから」という。

 病院勤務だった石村さんは約10年前、助産師が主に出産を介助する「院内助産所」ができるにあたり、助産所で学び直した。この10年間、院内助産所での約1000件のお産でトラブルはゼロ。「医師も助産師も、お互いが主張しあうことで役割分担が明確になり、チーム医療も強固になりました」

 助産師は全国に約2万6千人いるといわれる。石村さんは「助産師外来」「院内助産所」が、有床助産所の増加の呼び水になると考えている。

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 ■3病院が連携を約束

 助産所がオープンする場合、ハードルになるのが連携医療機関探し。産科医療機関も医師不足のなか、緊急対応の必要な初診の妊婦が突然、送り込まれてくることに尻込みするからだ。

 しかし、神戸市では連携医療機関が見つからない場合、3カ所の病院が必ず連携する取り決めがある。

 背景にあるのは、日本助産師会兵庫県支部が各医療機関を回った努力。同支部の毛利多恵子助産所部会長は「搬送件数は1病院あたり、月1件程度にしかならないと説明して協力を求め、連携にあたっては、申し合わせの内容を明文化することにした」という。

 兵庫県は医療機関との連携が比較的うまくいっている地域。年間約500のお産を扱う助産所は周産期ネットワークに組み込まれている。産科診療所と同じ扱いだから、いざというとき、助産師自身が高度医療機関の空きを探し、妊婦を送り込むこともできる。

 連携医療機関となる取り決めをした3病院の1つで、済生会兵庫県病院の左右田(そうだ)裕生産科医長は「搬送するときのルールを明確にし、定期的に勉強会などを行うことで相手の顔が見えれば、連携は十分可能と考えた」

 院内助産所を含む分娩が年間約2500件と、全国でもトップレベルの日本赤十字医療センター(東京都)の杉本充弘・産科部長は「お産介助はチーム医療で、医師と助産師の連携が不可欠。連携があってこそ安全が担保され、助産所で産む選択の自由が保障される」という。同センターでは、35歳以上の高齢出産が半数を超える。杉本部長は「高齢出産は、現代のお産のリスクを高める一因。精神的不安が大きいので、時間をかけて応対する助産師のケアが必要だ。今後も助産師需要は高まる。医療機関との連携促進が求められる」と話している。

(2009/04/07)