産経新聞社

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お産を守る 進む助産所の整備(下)

無事に出産ができるよう、医師と助産師の連携が求められる(写真はイメージです 瀧誠四郎撮影)


 ■診療所新設、自治体後押し

 産科医不足でお産の場所がなくなるなか、助産師をフルに活用しようと、国や自治体が助産所や産科診療所の開設に補助する動きが出てきています。自然分娩は助産師が担い、ハイリスク出産は病院へと住み分けが進むなか、助産師のスキルアップと、医師と助産師の強い連携が求められます。(北村理)

 銀座、築地、日本橋などの商業地が集まる東京都中央区。人口は約11万人だが、マンション開発で子育て世代が増加。平成8年には457人だった出生数は、昨年には1222人に膨れあがった。

 しかし、同区でお産ができる医療機関は現在、聖路加国際病院(福井次矢院長)ひとつしかない。有名病院だけに、区外からも妊産婦が集まる。中央区福祉保健部は「区内でのお産は、出生数の4分の1ほどしかありません」。残りは周辺区へ流れるか、里帰り出産だという。

 このため、聖路加国際病院と中央区の共同出資で、産科診療所を建設することが決まった。中央区は2年間で約1億2000万円を助成する。同区福祉保健部は「住民からの要望もあり、区内でお産ができるよう、環境整備を進めたかった」とする。45人の助産師を、3人の産科と小児科の医師がサポートし、年間800人程度の出産を目指す。

 しかし、自治体の補助には難しい面もありそうだ。中央区は「中央区民を優先的に診てもらえれば…。病院と診療所で区内のお産をまかなえれば理想的」ともくろむ。しかし、医療機関は患者を選ばず受け入れるよう義務づけられている。ブランド病院の産科診療所とあって、利用者は区内にとどまりそうもない。福井院長は「中央区の意図はくみたいが、優先受け入れは難しい。経営が軌道に乗り、受け入れ枠を広げられれば、結果的に中央区民の利益になるのではないか」と話している。

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 ■院内助産所や助産師外来 補助金で全国に増加

 厚生労働省は「助産師本来の能力発揮で医師不足を解消すべき」として、昨年から、院内助産所や助産師外来の整備に補助金をつけ始めた。

 全国ではこれまで院内助産所が31カ所、助産師外来が273カ所だったが、補助金がついて以来、院内助産所は5件、助産師外来は8件の申請があった。

 東京都内では、杏林大学病院が院内助産所を立ち上げるほか、4病院で助産師外来の増設や新設が計画されている。

 院内助産所や助産師外来などでは、医師と助産師の連携が着々と進んでいる。しかし、助産師が独立して営む助産所への理解は十分でない。助産所がある39都道府県で、助産所が周産期ネットワークに組み込まれていない地域は9道県に上る。これでは万が一のときに、助産所からスムーズな救急搬送が進まない。

 厚労省は「助産所は医療機関。周産期ネットワークに組み込んでいない地域があると分かり、一昨年、助産所を加えるよう通知したが、実施されていない地域もある。行政や医療機関の認識も変えていかなければいけない」という。

 一方、助産師にもお産の介助者としての力量が求められる。福井院長は「医師がいなくても、ある程度の医療技術ができる人材を育てたい。聖路加看護大学に新しい教育プログラムを作るつもりだ」と話している。

(2009/04/08)