産経新聞社

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編集部から 少子化対策は何のため?

 厚生労働省の社会保障審議会の年金部会に、将来の年金像が示された。若い世代は高齢世代に比べ、納めた保険料に対する年金額が少ない。世代間格差は5年前の試算より広がった。少子化や長寿化に応じて年金額を抑えこむ「マクロ経済スライド」が、デフレの影響で発動されないからだ。

 暗い見通しに、委員からは「少子化対策が必須」との意見が相次いだ。一瞬、少子化対策部会だっけ?と思うほど。

 しかし、なんだか「少子化対策」という言葉に、ひどく現実とのギャップを感じた。

 不況のなか、「育休切り」が増えている。育児休業中に、会社から「戻っても仕事がない」だの、「休みを延ばしてくれ」だの言われるという。

 さらに、職場復帰しようとすると、今度は自治体窓口で「保育園はいっぱいで入れません」などといわれる事態なのだ。親子は世の中からいじめられている気分になるだろう。

 人減らしを迫られる事業主が、24時間会社に貢献する人を残そうと考えるのは、分からないわけではない。しかし、社会全体では、それは「子供を持つのはリスキーだ」との強いメッセージになる。

 政府は補正予算に保育園の待機児童解消策を盛り込んだ。しかし、少子化対策は年金のためでも、景気に左右されてでもなく、地道にしてほしいと思うのだ。(佐藤好美)

(2009/05/29)