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高齢者の大腸がん精密検査 信頼性高い内視鏡

検査承諾書を前に「怖くて足が震えてしまった」と話す山口京子さん(仮名)=千葉県市川市


 ■胃カメラより苦しいけど/費用が分かりづらいけど/大量の下剤を飲む…けど

 自治体や人間ドックなどで大腸がん検診を受け、精密検査が必要と言われたら、大腸の内視鏡検査を受けなければならない。しかしこの検査、胃カメラ以上に辛く苦しいとされ、高齢者は受診をためらいがちだ。また、費用が分かりづらいとの指摘もある。高齢者と大腸がんの精密検査について解説する。(清水麻子)

 千葉県市川市の山口京子さん(79)=仮名=は3月中旬、自治体の大腸がん検診の便潜血テストで陽性が出て、「内視鏡検査ができる病院で精密検査してください」と言われた。

 どこの病院に行くべきか、費用はどの程度かかるのかなど詳細な説明はなく、分からないことだらけだった。しかし、このまま放置し、もしもがんだったら嫌だ。

 山口さんは勇気を出して、東京都内のある医療機関に相談したが、さらなる難題にぶつかった。検査前に飲む約2リットルの下剤が原因で亡くなることもあるというのだ。

 医療機関からは、下剤を飲まない検査として、(1)バリウム検査(2)血液を採取して血液中のがん細胞を発見する「腫瘍(しゅよう)マーカー」の採血検査(3)特殊な装置で体を撮影してがん細胞の有無を確認する「PET検査」−などの選択肢を提示された。しかし、どの検査を受ければいいか分からず、頭を抱えてしまった。

 国立がんセンターで15年間内視鏡検査に携わり、現在は内視鏡検査を専門に行う東京都中央区の藤井隆広クリニックの藤井隆広院長によると、「便潜血テストで陽性が出たからといって、大腸がんを心配しすぎることはないが、がんの早期発見に一番有効で信頼性の高いのは内視鏡検査」と説明する。

 藤井院長によると、大腸がんは早期であれば、ほぼ100%近く完治する。しかし、進行がんでも自覚症状は少なく、症状が出たときには手遅れという場合も多いという。平成19年の厚生労働省の調査では、女性のがん死の部位別トップ(全年齢)は大腸がんだった。

 藤井院長は「高齢者でも、一度でも陽性が出た場合は積極的に内視鏡検査を受けるべきだ」と促す。下剤の使用については、「確かに大量の下剤を飲み、腸が破れることが100万人に1人と非常にまれだがある。これは、飲む下剤の量を少なく工夫したり、院内で様子を見ながら飲んだりすることで危険性は回避できる」と指摘。その上で、「最近は医師の内視鏡操作技術が向上し、検査時の鎮痛剤などの工夫もされている。苦痛を感じず検査が受けられる病院やクリニックも増えている」とアドバイスする。 

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 ■保険適用か、事前に確認を

 大腸がんの精密検査の費用は分かりづらい。医療保険制度に詳しい医業経営コンサルタントの秋元聡さんによると、精密検査の種類や実施施設などによって、医療保険が適用にならない場合があるので注意が必要だという。

 秋元さんによると、大腸内視鏡検査は「がんの疑いがある」とされる段階から医療保険が適用になる。1回でも便潜血テストで陽性になれば、75歳以上の自己負担額(1割)は、約2000円にプラスして薬代がかかる程度という。ただし、病院併設の検診センターなどは医療保険で請求できない場合があり、自費扱いになる可能性も。「事前に保険が適用されるか確認してほしい」と秋元さん。

 大腸のバリウム検査や腫瘍(しゅよう)マーカーも同様に、「がんの疑い」から医療保険が適用される。バリウム検査の自己負担額は75歳以上の場合は1000円前後、腫瘍マーカーは数百円(どちらも検査料部分の金額)。

 一方、PET検査は現在、がん患者にしか医療保険が適用されていないため、「がんの疑い」では全額が自己負担となり、数万〜十数万円以上と、施設により差が大きい。

 秋元さんは「体調や年齢などその人に適した検査方法、内視鏡に熟練した医師などの情報は、かかりつけ医に聞くのが一番。医療保険については都道府県の医療相談センターでも確認できる」とする。

(2009/06/11)