産経新聞社

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増えるデイサービスの延長 宿泊や早朝、土日もOK

デイサービスの後、夕食をとる高齢者。家族は夕食の支度を心配せずに残業ができる=東京都青梅市の「河辺デイサービスセンター」


薬剤師としてのキャリアは15年という工藤裕加里さん。「母の介護をしていても、好きな仕事を続けていられるので、ストレスはほとんどない」と話す=川崎市幸区の「竹内薬局」


 ■送迎も対応/利用料の確認忘れずに

 働きながら家族を介護する人たちにとって、午後4時に終わってしまうデイサービスは使い勝手が悪いものだ。しかし最近は、就業時間に合わせて、夜間や早朝まで要介護者を預かってくれるデイサービスが増えつつある。急な残業にも対応してくれる場合もあり、好評だ。(清水麻子)

 「みなさん、夕食の時間ですよ」。午後6時。東京都青梅市にある河辺デイサービスセンターで、宿泊予定の80〜90代の高齢者4人が食卓を囲んだ。

 同センターでは平成18年4月から、働く家族の帰宅時間に合わせて延長・宿泊サービスを実施している。デイが終わるのは通常のデイと同様に夕方4時ごろだが、家族の希望があれば、午後7時まで引き続き高齢者を預かっている。夕食は1食600円。家族の帰宅時間に合わせて送迎したり、そのまま泊まったりすることも可能だ。

 沢崎豊センター長は「夕方4時で終わりでは、『仕事が続けられないので何とかしてほしい』という要望が家族から寄せられ、土日にデイを開き、延長や宿泊、早朝対応も始めた。共働きや夜勤勤務がある家族から喜ばれ、毎日5、6人が利用している。急な残業にも柔軟に対応している」と話す。

 料金体系も無理がない。午後6時までの延長では、デイの基本料金(要介護度に応じて約690〜1150円)に加えて約50円かかるだけ。午後7時までだと、基本料金プラス約100円。宿泊は1泊1500円だ。

 長時間、高齢者が施設に滞在すれば疲れないか心配になる。しかし、沢崎センター長は「懸念しすぎることはない」という。「『家に帰りたい』という高齢者も時々いるが、テレビを見たり、読書をしたり、時にはベッドで横になり、くつろいでもらっている」(沢崎センター長)。

 こうしたデイの延長サービスが増えているとはいえ、実情は午後3時半〜4時に終わるデイがまだ大半だ。情報は、ケアマネジャーや市区町村の介護保険課、地域包括支援センターが把握している。

 一方、10時間以上、デイに滞在する場合は介護報酬が適用されないので、事業所によっては1時間につき数千円かかってしまう場合がある。宿泊が1万円以上という施設もあり、利用料には注意が必要だ。

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 □お得な「小規模多機能型居宅介護」

 ■何度通っても料金一律

 費用を抑えたい場合は、1カ月間、何度通っても、何時間滞在しても、基本料金が一律の「小規模多機能型居宅介護」を利用するのも手だ。

 川崎市の工藤裕加里さん(38)は、薬剤師として午前9時から午後8時まで働きながら、近くに住む若年認知症で要介護度5の母(62)を介護している。妹の息子(2)の子育ても手伝っているが、この生活が維持できているのは、近隣の小規模多機能型居宅介護「ひつじ雲」を利用していることが大きいという。

 5月、父(71)が介護の疲れから入院してしまったときには、母に土日も含めてほぼ毎日、ひつじ雲に通ってもらい乗り切ったという。毎日利用しても基本料金が3万円以内。食費を含めても5万円程度で済んだ。

 工藤さんは「食費がかさむときは『おにぎりを持ってきてもいいのよ』と配慮してくれ、いつも利用者の立場になって考えてくれる。また、長時間預けても母の居場所になっているので安心」とうれしそうだ。

 「ひつじ雲」を運営するNPO法人「楽」の柴田範子理事長によると、利用者のうち働く家庭の利用は3割程度。「大規模なデイでは参加者が帰っていくと、残されてしまった高齢者が寂しい気持ちになりがち。しかし、小規模だと職員がずっとそばにいられるので、寂しくはならないのでいいという声が寄せられている」と柴田理事長はいう。

 仕事をしながら介護もする家庭にとって理想的なサービスだが、厚生労働省によると、平成21年2月現在、全国に約1900カ所しかなく、利用したくても利用できない場合がある。ただ、市内であれば遠くても対応してくれるので、市区町村、地域包括支援センターやケアマネジャーに引き受けてくれる事業所を探してもらうと良い。

 一方、現在、デイやショートステイなど介護保険サービスを使っている人が、小規模多機能型居宅介護を利用したい場合、利用予定の小規模多機能型居宅介護に属するケアマネに変えなければならないことは覚えておきたい。

(2009/06/25)