産経新聞ENAK 2月号
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エレクトーン奏者 高田和泉「1台でここまで表現できるんですよ」
エレクトーンとは楽器メーカー、ヤマハが製造販売する電子オルガンのことをいう。高田和泉は、そのヤマハのエレクトーンの可能性を徹底的に追究したCDアルバム「ブリリアント・ノーツ」でデビューしたエレクトーン奏者だ。エレクトーンという楽器は子供時代に接したことがある人も多いはずなのに、その音の神髄に触れる機会は案外少ない。自分の演奏する姿を見て、ひとりでも多くの子供がエレクトーンに親しんでくれたらうれしいと語る高田に話を聞いた。

音の手品師
「ブリリアント・ノーツ」を聴くとたいていの人が驚くに違いない。1曲で中国の楽器、二胡と共演している以外、すべての音は1台のエレクトーンから発せられているのだ。米国の有名なジャズピアノ奏者、チック・コリアが作った「スペイン」という曲では、ベースがぶんぶんとうなっているが、これもエレクトーンから出ている。

高田和泉エレクトーンは昭和34年に誕生して以後、進化を重ねて今日に至る。鍵盤が2段になって足踏みベースがついている、というのが一般的なイメージではないかと思うが、最新機種を見れば鍵盤周りに多数のスイッチ類が並び、モニター画面もついている。かつてのオルガンの兄弟という印象はなく、デジタル機材そのものになっている。そして、デジタル機材ならではの拡張性を武器に、500前後の楽器の音色が出せるのだ。しかも、事前設定により瞬時にだ。

「これとこれとこれを選択して…」。高田は、演奏しながらエレクトーンの機能について解説してくれたが、さっぱり分からなかった。ドラムが鳴り、ピアノとオルガンの音色が同時に響く。ともかくシンセサイザーと違って1台で複数の音色を同時に出せるのだな、と理解するのがやっと。なんだか音の手品師だ。

負けず嫌いで練習続ける
幼稚園に通っていたとき、先生がエレクトーンを弾いているのを見て、自分も弾きたいと思ったのがきっかけだったという。母親はピアノを習ったほうがよいのではないかと提案したが、新しい物好きの父親が賛同してくれてエレクトーンを自宅に購入した。ヤマハの音楽教室に通い始めた。

高田和泉 「教室では劣等生でした。ものすごく怒られて、通うのがいやになっちゃった。でも、母は私が負けず嫌いだと知っているから『いやなら、やめなさい』としか言わない。そうすると、私は『なに、くそ』と思って続ける」

やがてヤマハの主催するコンクールに参加し、自作曲に大きな拍手を送られるなどの経験が自信をつけていく。エレクトーンの先生になりたいという夢を抱き、大学生のときに国際大会で受けた拍手は、その夢を先生から演奏家に変えた。

「私が子供のころ、実際にエレクトーンを弾く人を見る機会がなかった。初めて接したときは感動しました。その感動を私が与えられたら。子供たちの“あこがれの人”になって、エレクトーン人口を増やせたらと思っています」

ここまで表現できるんだぞ
「ブリリアント・ノーツ」の録音には困難も伴った。エレクトーンは実は出力が2系統しかない。せっかく多彩な音が出るのに録音機材に向かってはふたつの“出口”しかないということだ。それで録音しては音に広がりがなくなってしまう。エレクトーン演奏の録音物が少ないのは、そんなことも理由になっている。

高田和泉 そこで高田が考えたのは、使う音色の数だけバラバラに録音する方法だ。単純にいうなら1曲の中で10の音色を使う場合は、1曲を作り上げるのに10回録音を重ねる。同時に演奏できるのがエレクトーンのすごさなのだから、なんだか倒錯した話だが、ともかくエレクトーンにこだわった結果、ほかに選択肢はなかった。

かつて、他人のレコーディングでシンセサイザーを弾いて苦労した経験があった。エレクトーンなら1台でさまざまな音が出るので、イメージした音をすぐに確認できるが、ほかの楽器ではそれができなかった。そのとき、エレクトーンのよさをしみじみと知った。だから、エレクトーンにこだわり続ける。

「このCDはエレクトーン1台でここまで表現できるんだということを伝えたい。私にとっていちばん表現しやすい楽器がエレクトーンなんです」

今回は二胡と共演したが、今後もさまざまな楽器と共演したい。そのために、多系統で出力できる、レコーディングに対応したエレクトーンが開発されることを心待ちにしているという。そのぐらいこの楽器の可能性に惚れ込んでいる。

「エレクトーンって20万人が現在習っていて、60万人が何らかの機会にさわったことがある楽器なんですよ。イメージした音がパッと出るし、組み合わせた複数の音色が同時に出てくる。しかも、ピアノと違って力の弱い人にも演奏できるんです」

顔を輝かせて楽器の魅力を語る。高田和泉は麗しきエレクトーン伝道師なのだった。


text & photo by Takeshi Ishii/石井健


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ブリリアント・ライブ
高田和泉 デビュー・アルバム「ブリリアント・ノーツ」
発売記念


2月26日 18時30分Start
ブルー ジェイ ウェイ
http://www.bj-way.com/
(東京都渋谷区神宮前2-32-5 ダヴィンチ原宿FACE B1)


PROFILE
高田和泉(たかだ・いずみ)
昭和56年大阪府生まれ。神戸大学発達科学部卒。
4歳よりエレクトーン、11歳よりピアノを始める。
小学校のころに曲作りの楽しさに目覚め、ジュニアオリジナルコンサート、エレクトーンコンクール等にも出場し、高い評価を得る。
平成11年大学在学中に「インターナショナルエレクトーンコンクールポピュラー部門」第2位を受賞。翌年プレイヤーとしてデビュー。
これまでに全国各地をはじめ、タイ、台湾にも招聘されるなどの演奏活動を展開。
また、ソロ演奏のみならず、ウエイウエイ・ウー(二胡)など様々なジャンルのアーティストとの共演や、テレビ番組での演奏、司会なども意欲的に展開している。 (公式サイトより)
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