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ぜいたくに味覚の至福 
リーガロイヤルホテルのフランベサービス
8月8日(火) 大阪夕刊 text by 田井東一宏 photo by 山田耕一
昼の火照りを夕闇が和らげ始めたころ、フロアの照明が落とされ、金色の柄杓(ひしゃく)から青白い炎が、磨き上げられた銅製のフライパンに注がれた。フライパンからは赤い炎が立ち上り、そのコントラストの美しさに、見ている者は心を奪われる。

リーガロイヤルホテル(大阪市北区)の1階にある「メインラウンジ」で今夏から始まったフランベサービス。フランベとは、お酒の風味や香りをつけるためにブランデーやラム酒など、アルコール度数の高い酒をふりかけ、火をつけてアルコール分を飛ばす調理法。フランベしたチェリーをバニラアイスクリームに掛ける「チェリージュビレ」は、デザートの女王と呼ばれている。

客の目の前で繰り広げられるフランベは、「いかに魅せるか」も大切な要素。メインラウンジのマネジャーを務める平田俊一さん(45)が、優雅な所作で炎を注ぎ、その魅力を一層引き立たせる。

「ジュビレ」とはフランス語で、50周年記念祭、あるいは金婚式。フランスの高名なシェフが、英国のビクトリア女王の即位50周年の祝宴で、フランベサービスとともにチェリージュビレを初めて献上し、一躍有名になったという。

同ホテルでは、階上のレストランがフルコースのデザートでフランベサービスを披露している。

「炎がおりなす優雅なデザートをより多くのお客さまに楽しんでいただきたい」と平田さんが企画し、メインラウンジでのサービスが実現した。

注文するのは、女性客をはじめ、カップルや家族連れなどさまざま。「ほかのテーブルでのフランベサービスを見て、ぜひお願いしたいと注文されるお客さまもいらっしゃいます」


フランベされた熱々のチェリーソースを注ぐと、アイスクリームの表面がみるみる溶けていく。

チェリーの甘酸っぱさをキルシュ(チェリーのブランデー)のピリリとした風味で引き締めたソースが、ホテル自家製のアイスクリームと混ざり合い、舌の上でつかの間のハーモニーを醸し出す。

そのつかの間を求めてもう一口。目をつぶると先ほどの青白い炎がまぶたの裏でゆらめき、昼間の強い日差しで火照った頬まで溶けていく。冷たい甘さが頭蓋の中を駆けめぐる。

同ホテルは「大阪に迎賓館となる最高級の国際ホテルを」との政財界の肝いりで建てられ、開業70年を超える。ホテルの顔ともいえるメインラウンジには、曲水の宴を模した川が流れ、「紫雲」を表現したシャンデリアが飾られている。

そっと目を開けると、シャンデリアの柔らかい光に照らされた小磯良平や小出楢重ら日本を代表する画家の作品が目に入る。ここだけ時間がゆっくりと流れ、街の喧騒が遠のいていく。

ぜいたくな夏のデザートは、ぜいたくな空間で、なんて広告のような言葉が浮かんだ。

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ブランデーが燃える青白い炎とフライパンから立ち上る赤い炎のコントラストが美しいフランベサービス=大阪北区のリーガロイヤルホテル(上)フランベされたチェリーとバニラアイスクリームが絶妙のハーモニーを醸し出す「チェリージュビレ」
ブランデーが燃える青白い炎とフライパンから立ち上る赤い炎のコントラストが美しいフランベサービス=大阪北区のリーガロイヤルホテル(上)フランベされたチェリーとバニラアイスクリームが絶妙のハーモニーを醸し出す「チェリージュビレ」