謎のローソン部−。コンビニエンスストア大手ローソンは、こんなタイトルの携帯サイトを開設している。入部に条件はなく誰でも参加はOK。会員向けにローソンが提供する新商品やサービスなどの情報を提供している。会員にメールを送信して商品の反応を探ることもある。
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ネットの世界を飛び出し、「謎のローソン部」が大塚製薬と共同でイベントを展開=東京・表参道 |
「紀州梅のおにぎりどう思う? 『おにぎり屋』の3代目が悩んでいるんですよ。ちょっと聞かせてもらえますか」
携帯メールらしく、こんなくだけた口調で会員に問いかける。「すると会員のみんなは、わざわざ買って意見を送ってくれるんです」と、謎のローソン部部長「ち☆ひろ」こと、ローソンの情報通信関連子会社アイ・コンビニエンスのマネジャー、高橋千宏さんは語る。
会員は全国に数万人。高橋さんが毎日のように送信するメールに応える「真のコンビニ好き、ローソン好き」(高橋さん)だけが残った。それだけに寄せられる意見は手厳しく、商品を見直したりすることもしばしば。メールをきっかけに思わぬヒットになった商品も数多く、部員たちは隠れた商品開発担当者になっている。
メーカーの多くは広告宣伝に莫大(ばくだい)な費用をかけて商品をPRし、売り上げにつなげている。だが、PRはあまりしていないのにヒットすることもある。「この商品はいい」という人づての話がきっかけだ。「口コミ」と呼ばれた消費動向だが、最近はインターネットを通じて情報が急速に広がる「デジコミ」としてマーケットに注目されつつある。
「デジコミ」によるヒット商品の代表格がチューイングキャンディー「かむかむレモン」だ。
菓子卸大手のサンエス(東京)の子会社、リバティジャパンが販売。これといった宣伝をしていなかったのに女子高生の間で「おいしい」と評判に。「テレビやインターネットのブログにも紹介されるなど知名度を上げ、昨年のヒット商品の一つになった」(大手コンビニ)という。
インターネットを活用し、商品販促に役立てる動きはメーカーにも広がっている。大塚製薬も謎のローソン部の“部活動”に着目し、13日に東京・表参道で新発売の栄養食品「SOYJOY」の販促イベントを展開。ローソンも謎のローソン部の女性部員約3000人の意見を集め、プリンの新商品を開発中だ。
「『口コミ』『デジコミ』が強いのは、企業側から一方的に流される宣伝広告と違い、消費者の真の意見だから」と高橋さん。「口コミ」「デジコミ」を意識した商品戦略は大きく広がりそうだ。