コレ聴き隊
マニアックなセットものの楽しみ方
ここのところなにかとバタバタしていたうえ風邪で微熱が延々と続くなど、しっとりCDを聴く時間がもてず、このコーナー、すっかり更新が滞ってしまった。

そうこうするうちに発売されたのが、この「THE CAPITOL ALBUMS VOL.2」。僕はネット通販で輸入盤を入手したが、国内での呼び方は「ザ・ビートルズ '65 BOX」という。

ちなみに、ビートルズ作品の日本での発売元である東芝EMIを通した輸入盤は今月3日に店頭に並んだ。僕のように通販で求めた人は別ルートでの輸入になるため11日発売だったはずだ。さらに、今後国内盤も出るらしい。なんだかややこしい話だ。ややこしいといえば、僕が購入したのは正方形のケースに入ったもの。店頭にあるのは縦長の長方形のものが多いのではないか。

さて、米国のCDはレコードの昔から、VOL.1が出て、それっきりという例が少なくはない。このビートルズの米国独自編集盤復刻シリーズも、16年11月に「VOL.1」が出て、あるいはそれっきりなのではないかと思ったりもした。実際、昨年は出なかったが、突如として登場した第2弾がこれだ。

1965年に米国で発売された独自編集レコード4作品の復刻CDをセットにした。

ここで少し説明すれば、ビートルズ作品は英国で発売されたものが“正規の”内容なのだが、60年代は米国や日本などそれぞれの国が独自に編さんしたLPを発売していた。1987年にビートルズ作品をCD化する際、混乱を避けるため基本的に英国盤を正規作品として各国編さん盤は廃盤にした。それがビートルズの米国上陸40周年を記念して2004年に前述のVOL.1が登場した。

なにがどう違うかといえば、87年のCD化の際、初期の4作品についてはモノラル録音のほうを正規版とした。ステレオ黎明(れいめい)期の60年代はステレオ盤とモノラル盤とが存在し、それぞれに向けた音質・音量調整がなされていた。で、ビートルズのプロデューサーだったジョージ・マーティンが、初期の4作品についてはモノラル作品を正規のものと意識して制作していたと主張したのだ。

ところが、「ザ・ビートルズ'64 BOX」は、モノラル版とステレオ版の双方を収録。このためCD化以降はモノラル版しか聴けなくなっていたいくつかの楽曲について、ステレオ版が聴けることになった。

「ザ・ビートルズ '65 BOX」のほうも収録曲についてはステレオ、モノラル両方を収録している。ただし、そのへんの違いは、マニアには重要な要素だが、一般的な聴き手にはあまり意味をなさないかもしれない。収録作のうち「ヘルプ!」については劇中音楽も収めた映画のサントラ盤であり、“普通の”「ヘルプ!」とは内容が異なるのだが、これもまたマニアックな話題。

ちなみに、この「 '65 BOX」については、キャピトルレコードがモノラルとステレオのマスターテープを取り違えて商品化しているというマニアックな指摘もされているようで、どこまでいってもマニアックな作品なのだ。

したがってこれは、ぜひ、正規盤をひととおり聴いた後に手を出してほしい。

そこで正規盤についてだが、遠くない将来、音質を再調整した音源が登場しそうだ。外国通信社が伝えた。

米アップルコンピュータとの商標をめぐる裁判の中で、ビートルズ作品を管理するアップル社のニール・アスピノール社長が提出した供述書の中で明らかにされた。供述書によれば、ビートルズの全音源のデジタル・リマスター化の作業が進められている。これを受けてアップル社広報もビートルズの楽曲のオンライン配信に向け準備を進めていることを明らかにしている。

さて、オンライン配信だけになるのか。CDも出るのか。ビートルズの“正規作品”CDは87年に出たきりのままで、音質などについて見直されずにきていている。

ともかく、これからビートルズを聴こうという人は音質がさらに向上した録音が出るのを待ってもいいかもしれない。

もしかしたら、単なるリマスターだけではなく、付加価値がつくのではないかという観測も流れている。

いずれにしても、正規盤を聴いた後にぜひ、この「ザ・ビートルズ '65 BOX」、あるいは「'64 BOX」を聴いてほしい。細かな差異の発見に大きな喜びを見いだすことができる。ビートルズというのは、そのぐらい、深い。 (石井健)

今回聴いたCD
・ビートルズ '65 BOX
ザ・ビートルズ '65 BOX
ザ・ビートルズ
輸入盤
これまでに聴いたCD

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