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知識の普及課題
「緑茶」世界へ着々 健康ブーム追い風
  東京朝刊 by 海老沢類
健康志向の高まりや日本食ブームを追い風に、緑茶の輸出が拡大している。昨年の全国の輸出数量は平成に入って初めて1000トン台を突破した。正しい緑茶のいれ方を教えるために外国人指導者の育成を検討したり、海外に専門家を派遣して好みの飲み方を調査したり。国内需要が横ばいのなか、業界やNPOは世界への売り込みに力を入れ始めた。

日本茶業中央会が作った英文パンフレットと、明治時代に外国向けの緑茶パッケージに張られたラベルをデザインした絵はがき

茶ムリエ海外進出
日本茶インストラクターの育成などを手がけるNPO法人「日本茶インストラクター協会」(東京)は、海外で日本茶の基本的な知識を広めるために、外国人の日本茶アドバイザー育成を検討している。

緑茶に注目が集まり、輸出が拡大する一方で、正しい飲み方や保管方法はあまり浸透していないのが実情だからだ。「冷暗所での保管が原則なのに日光に当ててしまう。沸騰したお湯で入れた苦いだけの緑茶を飲む人もいる。緑茶本来の味や香りが理解されていない」と、杉本充俊専務理事は顔をしかめる。

想定しているのは“茶ムリエ”とも呼ばれる日本茶インストラクターに認定された外国人指導者に、緑茶の人気が高まっている中国や台湾などで養成スクールの講師を務めてもらう形態。教えるのは、茶の製造法や入れ方から歴史までさまざまで、このスクールを卒業した外国人を、初級指導者にあたる日本茶アドバイザーに認定するという仕組みだ。

杉本専務理事は「輸出といっても、現地の業者にほうり投げるだけでは真の文化として浸透していかない。現地語を話し、草の根で緑茶の魅力を訴えられる人が必要だ」と訴える。

国の好みそれぞれ
伝統的な緑茶の味を伝える一方で、その国の好みに合った飲み方を探る動きもある。

全国の生産者や小売業者らでつくる社団法人「日本茶業中央会」(東京)は、農林水産省の委託を受け、今年9〜10月、パリ、北京、バンクーバーの3都市に専門家らを派遣した。現地で実際に緑茶を飲んでもらい嗜好(しこう)を調べるためだ。年度内には調査結果をまとめる予定だが、色や香りを重視する国や味にこだわる国など、それぞれの好みが浮かび上がったという。


「砂糖を入れたり、香りを出すためにハーブ類をまぜたり、ミルクを入れたり…と、緑茶の飲み方もさまざま。その国に合った飲み方を普及させていくのも調査目的の一つ」と柳澤興一郎専務理事。ヨーロッパ諸国の残留農薬基準に適合させるために、輸出専用の茶畑をつくる計画もあるという。

素材としても人気
東京税関のまとめによると、昨年輸出された緑茶の数量は1096トンで、前年より25・6%増え、昭和63年(1230トン)以来、17年ぶりに1000トンを超えた。輸出相手国は、アメリカが32・2%と最も多く、以下、ドイツ、台湾、香港などが続く。

大正時代には、外貨獲得のためにアメリカを中心に年間約3万トンが輸出されていたが、紅茶の市場が拡大したことに加え、「安価な中国茶の進出や円高によって価格競争力が低下した」(日本茶業中央会)ため、減少の一途をたどった。

輸出が伸びている背景には、健康志向の高まりや海外での日本食ブームがある。緑茶に含まれる成分に、がんのリスク低減や生活習慣病予防に効果があるといった研究成果が発表され、関心が高まっているという。リーフや抹茶だけでなく、パンやアイスクリームなどの加工食品の材料としても浸透しつつあるのも要因の一つだ。

最大の輸出相手国、アメリカでは大手コーヒーチェーンのタリーズコーヒーが今年5月、緑茶専門カフェ「クーツグリーンティー」の海外1号店をシアトルにオープン。スターバックスコーヒーも昨年、抹茶クリームフラペチーノなどを発売したところ好評だという。

富裕層がターゲット
緑茶研究の第一人者、大妻女子大学家政学部の大森正司教授(食品科学)の話「健康への効果が知れ渡り、世界的に緑茶に注目が集まっている。紅茶生産地のインドやセイロンも緑茶作りを始めた。日本茶は質は高いが値段も張る。海外の富裕層をターゲットにするなど差別化を図りながら売り込んでいく必要があるだろう」



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