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狩人の生きざま 自然との共生問う
「狩人と犬、最後の旅」仏監督、セミドキュメント映画
8月7日(月) 大阪夕刊 by 戸津井康之
世界的冒険家としても有名なフランスのニコラス・ヴァニエ監督が、ロッキー山脈に実在する一人の狩人の視点から地球の生態系や環境破壊について問うセミドキュメント映画「狩人と犬、最後の旅」を撮った。「人間は自然の恵みを享受し尽くしてきた。今こそフランスや日本などの経済大国は、自然を尊び恩を返す番ではないか」。文明の進歩にあらがう狩人の生きざまが、自然との共生の一つのあり方を提示する。初来日したヴァニエ監督のメッセージとは。

ニコラス・ヴァニエ監督
ニコラス・ヴァニエ監督

主人公はアラスカ近くのカナダ、ロッキー山脈の山奥で暮らすノーマン・ウィンターさん(57)。丸太小屋に住み、山で捕ったシカやウサギなどの肉や川魚、植物を食料とし自給自足で生きている。だが、近年の森林伐採で野生動物は激減。仲間の狩人が次々と下山するなか、ついに最後の狩人となる。

7年前、北極圏横断犬ぞりレースに出場したときに監督はウィンターさんと出会う。自然との調和を重んじ伝統的な狩人の生活を営む姿に共鳴した監督は映画化を決意。

「マイナス55度の酷寒でカメラなど機材が動かなくなるし撮影は壮絶でした。が、そんな過酷な環境だからこそ、そこで生き抜く生物の命の強さ、尊さを表現できたと思う」と監督は説明する。

「狩人と犬、最後の旅」のワンシーン
「狩人と犬、最後の旅」のワンシーン

映画はフィクションだが、ウィンターさんの実体験を再現、セミドキュメントの手法で撮影された。凍った湖に落ち、凍死寸前の窮地に陥るウィンターさんを愛犬が救い出す壮絶な実話がつづられる。そして、その底に流れる「自分の生活に必要のない狩りや植物の伐採は決してしない。自然から無駄に搾取はしない」という狩人の魂を切々と描いていく。「人間も動物の一つ。生態系の中で果たすべき役割を持って生きているということを狩人の生活は文明人に教えてくれる。“経済大国”に住んでいると見えてこない部分ですがね」と監督は話す。

地球規模で進む温暖化は深刻。が、彼は「今こそ人類の知恵が問われています」と話し、10年前に先進国が京都議定書で交わした温室効果ガスの5%削減の目標値設定に期待を込めた。

16歳で冒険家となり数々の冒険を成功させた彼は今年3月にシベリア大陸8000キロを犬ぞりで4カ月かけて走破したばかり。現在、トナカイ遊牧民とオオカミとの交流を描く次作の撮影準備を進めている。

「若いころは冒険すること自体が楽しかった。ですが、今は冒険で知った自然の素晴らしさや自然破壊の現状を映画でメッセージとして世界へ訴えていく使命を感じています」。生涯冒険家でありたいというヴァニエ監督は語気を強めた。

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