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原点回帰
「007 カジノ・ロワイヤル」イメージ一新、武骨なボンド
12月1日(金) 東京朝刊 by 岡田敏一
人気スパイ映画「007」シリーズ最新作「カジノ・ロワイヤル」(マーティン・キャンベル監督)が1日から、公開される。米中央情報局(CIA)の元工作員が主人公の映画シリーズに人気を奪われたジェームズ・ボンド。今回は、彼を原作小説に近い武骨なスパイとして描くなど原点回帰に徹した。

映画「007 カジノ・ロワイヤル」

1962年の「ドクター・ノオ」からスタートした007。キザでおしゃれで女性にもてて派手なスポーツカーを乗り回すジェームズ・ボンドが秘密兵器で敵を倒す。超人的なヒーローが活躍するこのシリーズはスパイ映画のひな型となった。

しかし、インターネットや携帯電話の普及で映画に登場する秘密兵器は色あせてみえるようになり、リアリティーの無さやマンネリ化を指摘する声もでるように。

強力なライバルも現れた。記憶喪失の元CIA工作員、ジェイソン・ボーンが主人公の「ボーン・アイデンティティー」(2002年)「ボーン・スプレマシー」(04年)のシリーズだ。粗野で無愛想なボーンが身近にある日用品を使って窮地を切り抜けるストーリーが全米で受け、2作は米だけで約2億9000万ドル(約340億円)、全世界で約5億ドル(約590億円)の大ヒットとなった。

刷新を余儀なくされた007だが、ピアース・ブロスナンに変わる6代目ボンドの選考も難航した。結局、過去のボンド役のイメージとはほど遠いダニエル・クレイグが選ばれた。人選を疑問視する声もあったが、イアン・フレミングの原作小説が描く粗野な007のイメージを狙ったキャスティングだった。

そうした経緯もあり、シリーズ21作目となる今回原作に選んだのは、小説版007のデビュー作だった。格好のよさばかりが目立った映画のボンド像を、原作に忠実なものに作り上げた。

原作では、活動費を使い込んだ仏在住の旧ソ連のスパイがバカラ賭博でもうけて損失を埋めようとしていることを知った英情報局秘密情報部(MI6)が、ばくちに強い工作員ジェームズ・ボンドを派遣し、彼を賭博で負かしてスパイ生命を絶とうとする。

要所で負けるボンドだが、同じ目的で賭博に参加していたCIAの工作員が自分のすべての賭け金をボンドに託す。ボンドは賭博を続行、勝利を収めるが、敵の一味に拉致(らち)される…。

時代設定などは現代に変えられているが、ボンドの描き方は原作をなぞり、過去のボンドとは正反対。秘密兵器は一切出てこず、洗練された振る舞いはない。格闘シーンはほとんどチンピラの乱闘だ。しかし、巻き返しを図ろうとする製作陣のパワーが作品全体にみなぎっており、007シリーズが息を吹き返したとはいえそうだ。

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