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筒井康隆原作
アニメ映画「パプリカ」 捨てられた“夢”の逆襲
12月11日(月) 産経Web by 猪谷千香
筒井康隆のSF『パプリカ』がアニメ映画化され、公開されている。手がけたのは今敏(こん・さとし)監督。夢と現実が交錯する複雑怪奇な筒井作品をスピード感あふれる美しい映像で表現した。ベネチア国際映画祭に出品され、年内に米仏で上映されるなど海外からも注目されている。筒井ファンだという今が思いを語った。

アニメ「パプリカ」

“パプリカ”とは、セラピスト、千葉敦子のコードネーム。他人と夢を共有できる機械「DCミニ」を使い、人々の悩みを夢の中で解決しているが、DCミニが盗まれ、悪用されてしまう。そして悪夢は実体化して現実を侵食し始める…。

今は「パーフェクトブルー」(1998年)や「千年女優」(2002年)など、現実と非現実が入り乱れる映画を製作してきた。「『パプリカ』みたいなことをやりたかった」といい、「価値観そのものが筒井作品にかなり影響されています」。

そんな今の作品を見た筒井から3年前、雑誌の対談で「『パプリカ』の映像化を」と要請され、映画化が実現した。

しかし、映像化にあたっては「骨格以外は作り直していると言ってもいいぐらい」正面から取り組んだ。「一方で、全然変えてないつもりでもある。原作を読んだときのインパクトを違った形で再現できればいいな、と。原作以外の筒井作品のイメージも入れましたが、“筒井康隆的”でなければという態度は守りました」

今の「パプリカ」の核となるのは、犯人が引き起こす悪夢。おもちゃ、家電製品、鳥居、仏像、自由の女神などあらゆるものがきらびやかにパレードする映像は、観客を圧倒する。

「高度成長期に買っては捨てい、買っては捨ててきた物たちが隊列を組んでやってきます。それは現実的で科学的な考え方ばかりが主流になり、夢なんて非科学的だと軽んじてきたことと重なる。夢が現実に逆襲するというイメージです」

キャスティングも華やかさにこだわった。「新世紀エヴァンゲリオン」の林原めぐみや「機動戦士ガンダム」の古谷徹といったアニメの人気声優をメーンに起用。また、俳優の江守徹が、いぶし銀のような声で重みと緊張感を与えている。原作者と監督が声優にチャレンジしているのも話題だ。

時に観客の許容量を超えるようなスピードで展開、まさに夢の洪水を見ているよう。今は笑う。「理解しようと思うお客さんにはかなり不親切な作り。理解してほしいのではなく、体験してほしい。だって、夢ってそういう感じでしょう?」

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