産経Webへ戻る
ENAKってどういう意味? | お知らせ | 新聞バックナンバー購入 | 問い合わせ | リンク・著作権 | MOTO | 産経Web
独立系作品、予想外のヒットに
「リトル・ミス・サンシャイン」絆深める笑いと涙の珍道中
12月15日(金) 東京朝刊 by 岡田敏一
“訳あり”家族が幼い娘の美少女コンテスト出場を機に家族の絆(きずな)を取り戻す米国のロードムービー「リトル・ミス・サンシャイン」が23日から公開される。米国では当初、わずか7館での上映だったが、口コミで人気が高まり予想外の大ヒットに。今年度のアカデミー賞脚本賞の有力候補と目されている注目作だ。


主人公は、米アリゾナ州に住む9歳のオリーブ(アビゲイル・ブレスリン)。まん丸の顔に大きなメガネ。最近おなかが出てきたことが気になる小太りの彼女の夢はモデルのようなスタイルになり、美人コンテストで優勝することだ。そんな彼女が全米一の美少女を選ぶ「リトル・ミス・サンシャイン」コンテストの決勝に進出する。狂喜乱舞する彼女。決勝戦が行われるのは遠く離れた西海岸ロサンゼルス郊外のレドンド・ビーチだ。

しかし、彼女の一家は問題だらけ。父リチャード(グレッグ・キニア)は、世の中は勝ち組と負け組の2種類しかないと豪語する偏狭な思考の持ち主。母シェリル(トニ・コレット)との夫婦仲も悪い。シェリルの兄フランク(スティーブ・カレル)はゲイで、同僚の研究者に恋人を寝取られたショックで自殺を図るが一命を取りとめた。

オリーブの兄ドウェーン(ポール・ダノ)は15歳。哲学者ニーチェの教えに倣って「沈黙の誓い」を立て、家族との日常会話もすべて筆談。祖父(アラン・アーキン)はヘロイン中毒で老人ホームを追い出された武勇伝の持ち主。いまだにエロ雑誌の熱心な読者で、ドウェーンに女遊びの楽しさを吹聴する。

こんな6人家族が、おんぼろの小型バスで自宅のあるアリゾナ州から会場まで珍道中を繰り広げる。コンテストで彼女は優勝できるのか…。

「私がこの世で嫌いなものは負け犬だ」。アーノルド・シュワルツェネッガー(カリフォルニア州知事)の発言をヒントに、マイケル・アーントが執筆した処女脚本の映画化。脚本は2001年に完成していたが、娯楽性重視の大手映画製作会社は見向きもせず、独立系作品として陽の目を見ることになった。

監督は、ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス夫妻。今年1月のサンダンス映画祭で大反響を呼び、20世紀フォックスの系列会社が約1000万ドル(約11億5000万円)で配給権を獲得。約6000万ドル(約69億円)を稼ぐ成功を収めた。

機能不全の家族が勝ち組を目指し、団結する珍道中はシニカルな笑いと感動が混在している。ヘロイン中毒のくせに「真の負け犬は挑戦を拒むヤツだ!」と弱気になるオリーブに説教する祖父は道中、ヘロインの吸い過ぎでショック死。バスは死体を乗せたまま爆走するが、そこへパトカーの警官が…とスリリングな展開も。オリーブが決勝戦で披露するブッ飛びダンスも必見だ。

この映画の予想外のヒットは、厳しい競争社会に疲れた人々が米国にいかに多いかをわれわれに教えてくれる。

産経Webは、産経新聞社から記事などのコンテンツ使用許諾を受けた(株)産経デジタルが運営しています。
すべての著作権は、産経新聞社に帰属します。(産業経済新聞社・産経・サンケイ)
(C)2006.The Sankei Shimbun All rights reserved.

ここは記事のページです