1960年代、若者のエネルギー
映画「初恋」塙幸成監督 “女子高生が語る”三億円事件は…
6月14日(水) 大阪夕刊 by 戸津井康之
白バイ警官に変装した犯人が現金搬送中の車を奪い逃走した三億円事件。白昼堂々の犯行。現場に数々の証拠を残しながらも時効を迎え、日本犯罪史を変えたこの事件をテーマに映画「初恋」(塙幸成監督)は作られた。4年前に発表された中原みすずの原作小説は、作者と同じ名の“みすず”が主人公。18歳の女子高生がこう語る。「私は府中三億円強奪事件の実行犯だと思う」と…。

映画「初恋」のワンシーン。宮崎あおいは10代最後の女優生命を賭け、“みすず”に自身を投影する 
映画「初恋」のワンシーン。宮崎あおいは10代最後の女優生命を賭け、“みすず”に自身を投影する 


昭和43年、東京・府中で三億円事件は起きた。映画はこの時代を忠実に再現する。一人の少女が語る“ある仮説”を元に。

≪人との交渉を避けて生きてきたみすず(宮崎あおい)は、新宿のジャズ喫茶で生き別れになった兄(宮崎将)と再会。驚くべき事件と関わることになる。兄の友人の大学生、岸(小出恵介)がみすずに明かした計画は3億円の強奪。みすずはバイクの乗り方を覚えさせられ…≫

「CGにはなるべく頼りたくないからロケハンには徹底してこだわった」と話す塙幸成監督 
「CGにはなるべく頼りたくないからロケハンには徹底してこだわった」と話す塙幸成監督
塙は「60年代の再現は一番難しい“時代劇”なんです」と言う。そう遠くない過去を描く場合、ウソはすぐに見破られる。現実の事件をモチーフにした作品では、なおさらリアリティが求められる。「困るのはロケ。セットでは臨場感が出せず、当時の街並みを探すのは大変です」。当時の新宿は今、その面影も存在しない。日本中を探し、北九州市内の商店街をロケ地に選んだ。

原作を読んで「10代最後にどうしてもみすずを演じたい」と、自ら名乗りをあげてきた宮崎あおいについて塙は、「その場で役に入ることができるとてもカンのいい女優」と評価する。

三億円事件が起きた年、ベトナム戦争やキング牧師の暗殺、東大入試の中止など、社会は混沌としていた。抑圧された若者のエネルギーはどこへ向かって行ったのか。タイトル通りの“甘い恋愛物語”では終わらない。塙は「若い世代にも共感を持ってもらえる作品にできたのでは」と自信を込めた。

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