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若者、デートに邦画
邦画興収 21年ぶりに洋画を上回る? 
  東京朝刊 by 岡田敏一
邦画の好調が続き、今年の興行収入(平成11年までは配給収入)が、ハリウッド映画の低調で伸び悩んでいる洋画を、昭和60年以来21年ぶりに上回る可能性が極めて高いことがわかった。昭和30年代にはシェアの8割近くを占めた邦画全盛時代から長期低落傾向が続いた邦画の復活について、映画関係者は「リメーク作品が目立ち、マンネリ気味のハリウッド映画に対し、邦画は若い層にターゲットを絞った作品が浸透し、若者がデートで邦画を見に行く時代になった」と分析している。

日本映画製作者連盟によると、今年前半で興収10億円を超えたのは、邦画が「LIMIT OF LOVE 海猿」「男たちの大和/YAMATO」など16本。洋画の「ダ・ヴィンチ・コード」など10本を大きく上回った。しかも洋画10本のうち5本は、「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」など昨年末に封切られ、今年初旬まで公開が続いたためにカウントされた作品だ。

洋画の10億円超作品は前年同期より15本、前々年同期より10本も少ないといい、近年まれに見る低調ぶりだ。

今年前半のシェアを見ても、邦画が昨年より7・7ポイントアップの49%と、洋画にほぼ並んだ。さらに年末にかけては、かつて大ブームを巻き起こした「犬神家の一族」のリメーク作品、人気テレビドラマを映画化した「大奥」、木村拓哉さん主演の「武士の一分」など強力作がめじろ押し。一方の洋画は「ハリー・ポッター」のようなドル箱シリーズはなく、邦画が21年ぶりに主役の座に返り咲くのは確実だ。

同連盟が調査を始めた昭和30年は、邦画が65・8%のシェアを占めていた。35年には8割近い78・3%を記録したが、これをピークに長期低落傾向に。60年の50・9%を最後に洋画を上回ることはなく、平成10年には過去最低の27・1%にまで落ち込んだ。

ところが、数年前から「ハウルの動く城」(16年)などジブリアニメ、「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(15年)といった興収100億円を突破する作品が相次いで登場。邦画全体に活気を与え、観客が戻り始めた。

邦画の躍進について、「電車男」などを手がけた東宝の製作担当者は若い観客を意識した作品作りを理由にあげる。「若者に的を絞った楽曲やサウンド作りで洋楽に勝ったJ−POPと同じ。その結果、今まで邦画をダサイと思っていた若者が新たなエンターテインメントとして認め始め、デートで邦画を見る時代になったんです」と笑う。

同連盟の愛宕(おたぎ)威志事務局次長も「ハリウッド映画の派手なCG(コンピューター・グラフィックス)に飽き、涙あり笑いありで、落ち着いて鑑賞できる邦画作品に観客が戻ってきたのでは」と話す。

一方で、ハリウッド映画の元気のなさを指摘する声も少なくない。「新たなテーマが見つからないのか、リメークばかりで題材不足の感は否めない」「スターの顔ぶれも同じで、新鮮味のない作品が多い」…。日本、韓国などのアジア作品などのリメークの多さや、マンネリ化を危惧(きぐ)する。

ハリウッドの低迷について、社会派で知られる米国のオリバー・ストーン監督は「いまのハリウッドを支える若手や中堅は、ベトナム戦争に従軍した私の世代のように、社会的に大きな出来事を経験していない。だからスケールの大きな作品は作れず、内省的で小粒な作品ばかりになっている」と嘆いている。

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