個性前面、裸で勝負
アナウンサードクター・吉田たかよし
7月1日(土) 東京朝刊
経歴がすごい。灘中・高から東大(理I)。国家公務員試験I種2年連続合格、NHKアナウンサー、衆議院議員の政策担当秘書、医師国家試験合格、医学博士…。現在は、“アナウンサードクター”として、文化放送の「吉田たかよし プラス!」(平日朝6時半〜8時半)で、パーソナリティーを務めている。


「“様式美”を期待されるNHKアナと違い、民放ラジオは真っ裸で勝負している感じ。最近は裸をさらす快感を覚え始めました」と笑う。

NHK時代はラジオのスポーツ中継や「ひるどき日本列島」のリポーターなどを行っていたが、不満がつのった。

「自分の思いを多くの人に伝えたかったのに、NHKアナは個性を出すのはタブー。悶々(もんもん)としていました」

メディアで自分をアピールするには独自のコンテンツが必要と考え、NHKを辞めて北里大医学部から東大大学院の医学博士課程に。「医学はおもしろい。解剖実習で人体の精巧さにみせられた。人間は遺伝子や環境の影響から逃げられないことを悟りました」

専門は睡眠医療。現在は番組のために午前2時半に起床するが、毎日の目覚めはさわやかだ。

「起きる10分前にランプがつくようにタイマーをセットする。まぶたごしの光が、視交差上核という神経を刺激し、自然に覚醒(かくせい)させるんです」

現役の医師であり、かつて代議士の政策担当秘書でもあった元NHKアナが健康問題や世相を解き明かす同番組に少しずつ注目が集まっている。

『不可能を可能にする最強の勉強法』などの著作も多いが、本人いわく「勉強は嫌い。最小限の努力で最大の効果をねらうのがモットー」。その頭脳は正攻法ではなく常に“奇手”を思いつく。

小学校のころには、竹と針金でつくった弓矢と自転車で流鏑馬(やぶさめ)を発案し、近所ではやらせた。

高校のときには、草野球で絶対にタッチアップさせない方法を思いつく。「フライを捕らなきゃいいことに気づいた。ヘルメットをかぶって、頭突きで内野にボールを送ればいい」。試合で試したら、ボールは命中したものの後ろに飛んでフェンスを越え、ただのフライがホームランに。

「噂(うわさ)になって次の試合から見物人がどっと来た。毎試合やらざるを得なくなっちゃって…」

「灰色の脳細胞を持った三枚目」のメディア進出は始まったばかり。さて、これから何をしでかしてくれるのか。(文・岡本耕治)

息を大きく“吐いて”リラックス/「著作権いらず」の音痴


Q 帰宅して最初にすること
体をオフモードにするため、息を大きく吐きます。よくリラックスするために大きく息を吸いますが、あれは間違い。息を吸うと交感神経が刺激されて心拍数が上がる。息を吐くと副交感神経の働きで心拍数が落ち、リラックスできるんです。

Q 愛読書は
ないんです。仕事の資料などは大量に読みますが、飛ばし読み専門。小説などは昔からほとんど読まないですね。

Q 座右の銘を
「不可能は人間が作り出した幻想だ」。たとえば、ぼくが宇宙飛行士になれる可能性はゼロかもしれない。だけど、宇宙空間での睡眠管理という形でならかかわれる。夢のうわべじゃなく本質を見つけ、近づいていくことはできる。

Q 一番痛かった経験は
NHK時代、「ひるどき日本列島」のリハーサルでプロデューサーに「映像にアクセントをつけたいから木に登って落ちろ」と言われ、実行して血だらけになりました。それと番組の冒頭で、海から登場する際におぼれて、海水を吐きながらあいさつしたときは恥ずかしかった。

Q 苦手なもの
相当な音痴なんです。ときどき番組スタッフが用意した原稿に、わざと歌詞が書いてある。仕方なく歌うんですが、誰が聴いても原曲が分からない。「これなら著作権処理がいらない」といわれてますよ。

●●●【プロフィル】吉田たかよし
よしだ・たかよし 昭和39年7月、京都府出身。東大工学部、同大学院を修了し、平成元年、NHKにアナウンサーとして入局。ラジオのスポーツ中継や総合「ひるどき日本列島」などを担当したが、「スポーツ番組で感動的な実況をしても、視聴者はアナウンサーではなく、選手に感動する。何かむなしさを感じてしまった」。
平成5年にNHKを辞めた後、北里大医学部に入り、13年に医師国家試験に合格。さらに、自民党の政治大学校を受講したことをきっかけに政策担当秘書の資格を取得。平成14年まで加藤紘一衆院議員の秘書として科学振興政策を中心に政策立案を行う。現在は「吉田たかよし プラス!」出演のほか、院長を務める「青葉メディケア・クリニック」(横浜)で診療活動も行っている。日本健康教育振興協会理事長。
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