100キロ近いスピード…非日常体験 夏満喫
水上オートバイ、人気復活
7月9日(日) 東京朝刊 by 冨岡耕
水遊びが楽しい、暑い夏が近づいてきた。景気回復とともに、最高時速100キロ近くで滑走できる水上オートバイの人気も復活している。最近はファミリー・初心者向けや復活モデルなど多種多様な新製品が登場しており、湖や海、河川での新たな楽しみとして広がりそうだ。

ヤマハ発動機のマリンジェット「MJ−FXクルーザーハイアウトプット」。水上オートバイは、こうして家族でも楽しめる

水上オートバイは小型船舶の一種で、エンジンでスクリューを回し、その推進力で水上を滑走する乗り物だ。日本では川崎重工業、ヤマハ発動機の国内メーカー2社に加えて、世界最大手のBRP(カナダ)が商品展開している。

このうち、最も有名なのは、川重が登録商標を持つ「ジェットスキー」だ。同社は世界で初めて水上オートバイを商品化した草分け的存在であり、根強いファンが多い。

中でも人気があるのが1人乗りモデル「X−2」。日本専用モデルとして昭和61(1986)年に市場投入された。“ペケツー”の愛称で長く親しまれたが、平成7年を最後に、いったん生産中止されたものの、ファンからの復活を期待する声が強く、昨年11月に約10年ぶりに復活モデルが発売された。今年夏からは日本全国の水辺でお目見えしそうだ。

特徴は、ハンドル固定型の操縦特性だ。1人乗りの水上オートバイは通常、ハンドルが上下に大きく動くことでバランスを保つが、X−2は、固定ハンドルを支点に、重心移動とアクセル操作だけで旋回する。商品企画部長の荒木健さんは、「体全体でボートを操る独特の操作性とスピード感は、ほかにはない感動がある」と強調する。発売年にちなんで社内での開発コードネームを「1986」とし、開発者の意識向上を図ったという。

ヤマハ発は「マリンジェット」の商品名で展開する。今年で発売20周年の節目を迎え、新たにファミリーや初心者など購買者のすそ野拡大に力を入れている。 昨年12月に旗艦モデル「MJ−FXクルーザーハイアウトプット」を市場投入。クルーザーシートと名付けた腰近くまで支える座席を新開発、採用した3人乗りタイプで、ファミリー層をターゲットにした。営業推進グループの神野裕文さんは、「運転位置がずれにくく、長時間のツーリングでも疲れない」とアピールする。各種排ガス規制にも対応し、静粛性にも力を入れたという。背丈に合わせてハンドルの位置も調節できる。

昨年には初心者向けに3人乗りタイプの「MJ−VXシリーズ」を投入。機能や装備をシンプルにしたことで、本体価格を100万円程度に抑えた。リアデッキのスペースも広く設けて、子供でも乗り降りを容易にする工夫をした。

川重とヤマハ発に挑むのが、海外メーカーのBRPだ。商社が輸入販売していたが、平成12年に日本法人を設立して本格参入。世界的ブランド「SEA−DOO(シードゥ)」を商品展開する。

今年の最新モデルには3人乗りタイプ「GTI SE」を投入。従来に比べて60キログラムほど軽量化して使い勝手を良くするなど、初心者の呼び込みを狙う。運転席前の小物入れも、従来は難しかった容量1リットルのペットボトルが縦に入るなど、遠出を意識した作りだ。

また、昨年発売した旗艦モデル「RXT」は、最高出力が215馬力、排気量が1500ccと業界最大級。「優れた加速と安定した直進性が持ち味」(販売担当者の潮田幹夫さん)で、大型モデルへの乗り換え需要を狙う。

水上オートバイの国内市場規模は、約10年前のピーク時に比べて4分の1程度の年間4000台まで減少した。だが、景気回復の影響で「今年から盛り返す」(業界関係者)との見方も多い。

操縦に必要な特殊小型船舶免許は、最短で計2日、総額6万円弱でとれるため、手軽で受験者の増加も期待されている。川重の荒木部長は「水上を最高時速100キロ近くで滑走できる非日常体験は魅力的」とアピールしており、今夏のボーナスが、マリンスポーツに投じられるか注目だ。

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