自動的に掃除したり、部屋の空気清浄ができたり
エアコン ヒットのカギは“賢さ”
7月12日(水) 東京朝刊 by 山口暢彦
フィルターのほこりを自動的に掃除したり、部屋の空気清浄ができたり…と、従来のエアコンに付加価値をつけた、高機能のエアコンが売れている。消費者の健康志向の高まりとともに、家の中の空気への関心も広がっていることが背景にあるようだ。今年は天候がすぐれず、エアコン全体の出足は今ひとつというが、メーカーや量販店は夏本番に向け、“救世主”ともいえる高機能エアコンのPRに懸命になっている。

フィルターの自動掃除など、いろいろな機能を備えたエアコンが売れている=東京・秋葉原の「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」
フィルターの自動掃除など、いろいろな機能を備えたエアコンが売れている=東京・秋葉原の「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」


お手入れ不要
東京・秋葉原の家電量販店「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」の松本光太郎さんはエアコン商戦の今年の“売れ筋”をこう語る。

「フィルターにたまったほこりを自動的に掃除する機種が非常に人気です。特に売れているのは10〜14畳用で、値段は15万〜20万円くらい。やや高めですが、団塊の世代から新婚カップルまで広い世代に受けています」

その中でも一番人気は「10年間お手入れ不要」がうたい文句の「新・お掃除ロボットエアコン」(松下電器産業)。エアコン内のノズルが、フィルターにたまったほこりの量を感知し、自動的に吸い取ってくれる。同様の機能を持つエアコンは、東芝やシャープも発売。3社の製品とも、空気清浄機能もついていることが“売り”だ。

夫(48)とともに来店した埼玉県朝霞市の主婦(43)は、「小学5年の息子がほこりによるアレルギー体質気味で、空気の汚れが気になるから」と、掃除機能つきを購入した。十数万円と割高感があるが、「(フィルター掃除は)高い(取り付け)場所からわざわざ下ろし、場合によっては業者を呼ばなければならない。手間がかかる」と話し、掃除を省けることの魅力を指摘した。

アレルギー対策
高機能エアコンの発売ラッシュについて、松下電器広報担当の森田真司さんは、消費者の健康志向の高まり、それに伴うアレルギー性鼻炎などを引き起こすほこりへの関心の広がりを理由に挙げる。

また、断熱効果を上げるために最近の住宅は気密性が高く、風通しが悪くなっていることが、屋内の空気環境への関心の高まりに拍車をかけていると指摘する。

松下電器のエアコンの場合、吹き出されるマイナスイオンが空気中のほこりを包んでマイナスに帯電。エアコン内の特殊なフィルターに吸い込んで吸着するが、このフィルターがプラスに帯電しているため、吸着力が高い。6畳だと、浮遊カビは40分、浮遊細菌は10分ほどで、ほとんどなくなってしまうという。

掃除機能は付いていないものの、「高機能」をうたうエアコンはほかにも続々と登場している。今年3月に発売されたダイキン工業の「うるるとさらら(Rシリーズ)」は、においの分解などの空気清浄機能を従来品の1000倍に高めた。また三菱電機も赤外線センサーで室内の人を感知し、その場所だけ冷やせる「霧ケ峰ムーブアイ」を投入している。それぞれ、付加価値を前面に押し出すことで、人気を集めている。

業界団体の「日本冷凍空調工業会」によると、エアコンは毎年、梅雨入り前後の6月から7月上旬にかけ、売れ行きのピークを迎えるが、今年は天候が悪く、気温も上がらないため、伸び悩み感があるという。しかし、ヨドバシカメラ家電コーナーの副島暢洋(のぶひろ)さんは、「高機能のエアコンは、下支えする形で順調に伸びている」と指摘、夏本番に向け、商戦の活況に期待を膨らませている。

換気に不安…防犯面も理由
「高機能」エアコンに人気が集まる背景には健康面だけでなく、防犯面の理由もあるようだ。

三洋電機が4月、首都圏に住む20〜50代の男女約300人を対象に換気に関する調査を実施したところ、「2日以上換気をしていない」人は全体の約25%。若いほど換気しない傾向が強く、20代独身女性と30代独身男性は「1カ月以上していない」が1割を超えた。

換気しづらい理由は「治安がよくない・プライバシーが侵害される」(39%)が1位、「外気の汚れ、ほこりが気になる」(38%)が2位。これに伴い、空気清浄機の売り上げも急増。日本電機工業会の調べによると、空気清浄機の国内出荷台数は平成12年は95万6000台だったが、17年には2倍近い184万台にまで膨らんでいる。

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