学校で発見できない
知ってましたか? 近見視力不良
7月18日(火) 東京朝刊 by 津川綾子
黒板は見えるけれど、教科書やノートの文字は見えづらい。そんな症状を表す「近見視力不良」という言葉を知っていますか? 学校で行われる視力検査では発見されることがないため、気づかないうちに学習や運動の能力をうまく発揮できなくなっていることもあるという。

学習や運動に支障
視力には大きく分けて、近くを見る「近見視力」と遠くを見る「遠見視力」がある。現在、小、中、高校で年に1度実施しているのは「黒板を支障なく見ることができるか」を調べる「遠見視力」の検査だ。

ノートや教科書など近くを見るときに必要な「近見視力」は、ランドルト環を5メートル先から見て測定する遠見視力検査では、その不良は発見できない。「遠くが見えるなら近くは見える、と思うのは間違い」。こう指摘するのは、近見視力不良の問題を研究する桃山学院大学の高橋ひとみ教授(健康教育学)。近見視力不良だと、目が疲れ、肩がこりやすいなどの症状があり、集中力が続かないなどの弊害もありうるという。

何より、教科書やノートの文字が見えづらいことが大きい。高橋教授が平成16年、大阪府内の小学1〜6年生920人に行った検査では、遠見視力は1・0以上と正常であるにもかかわらず、教科書のふりがなや注釈が読みづらい近見視力0・7未満の例が、右目で16人、左目で22人該当した。

間違いが目立った文字

また大阪府内の別の小学校で、近見視力不良だった子供による漢字の書き取りを調べてみると、画数が1本抜けていたり、つきぬけないはずのところがつきぬけていたりと、間違いが目立ったという(人間と午後)。高橋教授は「漢字の細やかなところまでよく見えないために起きた可能性がある。本人は見た通りに書いたのになぜ間違っているのか不思議に思っていることもありうる。能力ではなく視力の問題だと考えている」と話す。

保護者主導で検査も
全国の学校で行う視力検査の方法を示した日本学校保健会作成のマニュアルには、遠見視力検査に関する表記しかない。文部科学省でも「学校現場からは近見視力の測定を求める意見や要望は来ていない」としている。

そんななか、保護者が近見視力検査を実施する動きがある。東京都港区内にある私立幼稚園の父母会が今年2月、年長児約20人に対して近見視力の検査を行った。幸い、近見視力不良は見つからなかったが、父母会のメンバーとして検査を担当した主婦(40)は、「近見視力不良は、見たままに字を書いたにもかかわらず怒られたり、ドッジボールがうまくできなかったりと、学習や運動に支障をきたす恐れもあるので不安という声が父母から聞かれた。今年も年長児を対象に検査をする予定」と話している。

先天的、疲労、心因性が原因?
小児眼科に詳しい湖崎眼科(大阪)の湖崎克(まさる)医師によると、近見視力に不良をきたす原因と一般的に指摘されるものは3つあるという。

1つは先天的な強度の遠視。2つ目は、目の調節疲労だ。長時間にわたり、携帯ゲーム機など近くのものを見続けていると、目の水晶体を支える毛様体筋の緊張が続き、疲れとなって視力の調節機能が衰え、調節疲労になる可能性も理論的には否定できないという。

そして3つ目は心因性の一時的なものだが、これら近見視力不良につながる異常は眼科で専門的な検査を受ければ発見できるので、心配があれば受診してみるといい。

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