祖父・藤十郎の襲名披露公演「口上に出演できうれしい」
中村壱太郎 父・翫雀と「連獅子」
7月19日(水) 大阪夕刊 by 亀岡典子
中村壱太郎 今月、大阪松竹座で上演中の「坂田藤十郎襲名披露 七月大歌舞伎」に、藤十郎の孫の中村壱太郎(かずたろう)が出演、大曲「連獅子(れんじし)」を清新に踊って客席の喝采(かっさい)を浴びている。ただいま高校1年生。「若成駒!」の声もかかる伸び盛りのホープだ。

壱太郎は中村翫雀(かんじゃく)の長男。母は日本舞踊吾妻流家元の吾妻徳彌。来月3日で16歳になる。167センチのスリムな体付き。すくすくと素直に育った雰囲気の若者だ。

今月は、「連獅子」のほか、祖父・藤十郎の襲名披露の「口上」と「京鹿子娘道成寺」の所化(しょけ)にも出演。「口上に、祖父、父と並んで出していただけるのが本当にうれしいです」と顔を輝かせる。

「連獅子」は、父・翫雀と共演。能「石橋(しゃっきょう)」をもとにした歌舞伎舞踊の大曲で、親獅子が仔獅子を鍛えるため谷底に突き落とし、仔獅子がはい上がってくるのを喜び迎える−という話。前半は狂言師の姿をした二人の踊り。後半は一転、白と赤の長い毛をつけた親獅子と仔獅子の精が勇壮に舞い競う。

「どなたとやらせていただいても、仔獅子の自覚を持って踊らねばならないのですが、父とやると特に思いは強くなります」。というのも、親が子を愛情ゆえに苦難の道に突き落とすという内容は、歌舞伎における父から子への厳しい芸の継承と重ね合わされるから。見る方もつい特別な感慨を持ってしまう。

獅子の毛振りは、父と張り合うほどのスピード感で、何度も何度も美しい弧を描くように激しく回転させる。「最後まで力強く、自分をすべて出し切りたい」

東京生まれの東京育ちだが、上方の成駒屋の直系に生まれ、初お目見えは平成3年の京都・南座。初舞台も同じく関西で、7年1月の大阪・中座「嫗山姥(こもちやまんば)」の公時(きんとき)だった。上方歌舞伎に情熱を燃やす祖父を身近に見ながら育ったことは、壱太郎の中に上方の芝居への熱い思いを育てているに違いない。

さすがに成駒屋のDNAを感じたのは、昨年10月東京・歌舞伎座で、祖父の「河庄」に、丁稚三五郎役で出演したとき。「上方なまりがうまく出来るか心配でした」といいながら、大阪弁もなかなか達者で、いかにも上方らしい匂いがにじみ出ていたことに将来の上方役者としての輝きが見えた。

関西で公演があるときは父と大阪の家で男同士の二人暮らし。「掃除もどちらかがしないといけないですし、正直ホテルの方が楽ですが、大阪に暮らしていると実感できます。大阪の活気と温かさも大好きです」

芸も身長も伸び盛り。千秋楽(26日)まで全力投球の日々が続く。

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