「脳トレ」、テンキー機能も

進化する電卓　計算だけじゃない！？　　

　 東京朝刊　by　山口暢彦

計算ができる電卓は当たり前。時代は計算問題ができる電卓だ…とばかりに、電卓の機能が多様化している。「脳トレ」（脳トレーニング）を楽しめたり、パソコンにつなぎテンキー（数字キー）として使えたり。デザイン面でも若い女性受けする斬新なものが登場している。計算機能付き携帯電話の普及などで電卓が売れなくなっている現状を、何とか打開したいメーカーの思いがあるようだ。

多様な機能がつくようになった電卓。左はシャープ、右はカシオの計算機の「脳にいい」電卓＝東京都千代田区の「ヨドバシカメラ　マルチメディアＡｋｉｂａ」（撮影・山口暢彦）

東京・秋葉原にある家電量販店「ヨドバシカメラ　マルチメディアＡｋｉｂａ」。１階の売り場には、多種多様の電卓が並ぶ。例えば、近年ブームの「脳トレ」を楽しめるシャープの電卓。昨年秋の発売で、ブームの立役者でもある東北大学の川島隆太教授が監修している。

「『計算ドリル』ボタンを押すとスタートです。数字ボタンで答えを打ち込みます」と同店マネージャ代行の秋元誠一さん。問題数は「１００問」「５０問」「２５問」から選べる。

スタートすると、「７＋５＝」「６×８＝」など、足し算、かけ算、引き算、割り算の計算問題が次々と画面にあらわれる。すべて解くと、正解率やかかった時間が表示される。今年夏には、正解率やスピードから「脳年齢」を弾き出す新機種も登場した。同店で扱う「脳トレ」電卓はサイズや色違いで５タイプ。販売価格は２０００円前後だ。

購入者は４０、５０代の男性会社員や主婦が目立つという。「脳トレは『（任天堂の携帯ゲーム機）ニンテンドーＤＳ』でも楽しめるが、（ハードとソフトを）買うと２万円くらいする。（シャープの電卓は）脳トレを楽しんでみたいが、ゲーム機を敬遠している中高年が買っているのでは」と秋元さんは話す。

カシオ計算機からも“脳にいい”電卓が出ている。シャープに追随する形で、今年春に発売された。こちらの監修は陰山英男・立命館小学校副校長。「読み・書き・計算」の反復練習で子供の学力を上げる「陰山メソッド」の提唱者だ。

計算問題を１００問繰り返す「百ます計算」や、「□−８＝３」の式で□に入る数字を答える「虫食い算」など、４つの機能を楽しめる。多機能なぶん販売価格も少し高めで２９８０円。大人用と子供用がある。

計算問題機能だけではない。例えばテンキー機能付きの電卓。テンキーとは、デスクトップパソコンのキーボード右側に配置された数字キーのこと。「＋」「−」などのキーとまとめておかれており、数字を扱う仕事の人にとって、素早い計算に重宝だ。

しかし、普及が進んでいるノートパソコンにはテンキーがない。テンキー機能付き電卓は「ノートパソコンにワイヤなどでつなぎ、使ってもらおうという狙いで発売された」という。

同店で扱うのはカシオ計算機やキヤノン、シチズンの商品約２０種類。カシオ計算機からは、つなぐワイヤの不要なワイヤレス型（販売価格３９８０円）も出ている。ワイヤ付きより１０００円ほど高いが好評という。

デザイン面でも、おしゃれで斬新なものが出ている。通常の四角いボタンを丸くしたキヤノンの電卓（２０７０円）や、真っ白の本体に「ペパーミントブルー」「キャロットオレンジ」といった鮮やかな色のボタンを配したカシオ計算機の電卓（９８０円）は「若い女性に売れている」（秋元さん）という。

電卓市場は成長面からみると頭打ちだ。事務機器の業界団体「ビジネス機械・情報システム産業協会」（ＪＢＭＩＡ）によると、電卓の国内出荷実績は年々減少。電卓のみの統計を取り始めた平成１５年には約１０５億円だったが、１７年には８割程度の約８５億円にまで落ち込んだ。

ＪＢＭＩＡ業務部担当部長の坂口公芳（きみよし）さんは「電卓は一家に１台はあり、これ以上買う必要がなくなっている。また携帯電話やパソコンに電卓機能がつき、わざわざ電卓を買わなくてもよくなっている」と指摘する。多様な電卓が登場する背景には、そんな閉塞（へいそく）状況を打開したいメーカーの思いがある。カシオ計算機の広報担当者は「（新機能の電卓で）“２台目以降”の需要を作りたい」と話している。

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