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キューティクル、他国より多く
日本人の髪 ダメージに弱いがはげにくい?!
  東京朝刊 by 堀江政嗣
万葉集の時代から日本女性の美の基準とされた長く豊かな黒髪。最近の研究で日本人の髪の毛は欧米人などと比べて表面を覆うキューティクルが多いなどの特徴を持つことが明らかになり、その長所を引き出す成分を含んだヘアケア製品がヒットしている。一時の「茶髪ブーム」も最近は落ち着きをみせ、日本人独特の髪の魅力が見直されつつある。

“東洋の美”に注目
「日本の女性は美しい」

「世界が嫉妬(しっと)する髪へ」

資生堂や花王などヘアケア製品大手は数年前から、日本人を含む東洋女性の髪の美しさを強調したシャンプーやリンスを発売し、大々的な宣伝広告を展開している。こうした商品の背景には、研究開発の過程で明らかになった日本人の髪の特質がある。

日本人や中国人などモンゴロイド系の毛髪はくせの少ないストレートヘアで、限りなく黒に近い淡褐色が多く、断面が円型に近い。太さも平均60−80ミクロンと欧米人の40−60ミクロンを上回る。ハリがあってしなやかという長所はそのためだ。ただし、必要な栄養素を内面に行き渡らせるのが難しい。

人間の髪の毛は外側から毛表皮(キューティクル)、毛皮質、毛髄質の3部分で構成される。花王が東洋(日本、中国)人203人、西洋(ドイツ、米国)人210人を対象に実施した調査では、髪の毛を保護してツヤを出すキューティクルの枚数と1枚の厚さが、東洋人(日本人)は欧米人よりそれぞれ8%、5%上回ることが明らかになった。日本人の髪は外部からのダメージに強いように思えるが、実際は逆で、傷み始めると進行が早いこともわかった。原因は、うろこ状に伸びるキューティクルの傾斜角度にある。

日本人のキューティクルの傾斜角度は欧米人に比べて大きく、外部から負荷を受けるとめくれやすい。一方、傾きが少ない欧米人のキューティクルは崩れて細片となることはあってもめくれることは少ない。日本人の髪は、内部の毛皮質が露出してツヤの悪化や弾力性の劣化などが起きやすいと言える。

茶髪ブーム終焉?
平成15年に発売された花王のシャンプー・リンスブランド「アジエンス」は、日本人の髪質を考慮し、髪の補修・保湿効能を持つ有機酸や大豆、朝鮮ニンジンエキスなどの天然成分が配合されている。その後、資生堂も新ブランド「TSUBAKI」を投入して追随し、「東洋の美」「日本の美」が業界のトレンドとして根づいた。

日本人が西洋人の金髪をまねて髪の毛を染めるようになったのは米国文化が普及した戦後のことだ。1990年代の「茶髪ブーム」がそれに追い打ちをかけ、昔はほぼ黒一色だった日本人の頭髪は見違えるほどカラフルになった。

が、カラーリングは髪の毛を傷める主な要因。20−29歳の女性を対象にした花王の調査では、「髪の傷みが非常に気になる」と答えた人が12年に16%だったが、14年には26%に急増している。

「日本の美」が再評価されるにつれて、髪を染める人も減少傾向。日本石鹸洗剤工業会の調査では、ヘアカラーリングをしている人の比率は、13年には働く女性で85%。女子高生で41%、サラリーマンでも33%に達していたが、16年は前回比でいずれも7−8ポイント減少。黒髪の“復権”が数字に現れている。

花王ヘアケア美容センターの大塚英之プロジェクトマネジャーは「以前は黒髪は『印象が重い』と敬遠されがちだったが、茶髪ブームの揺れ戻しで『落ち着いた色もいい』と再評価されているようだ」と分析している。

はげにくい
毛髪に関しては、薄毛や脱毛が特に男性にとって、深刻な問題。日本人と外国人ではげやすさに違いはあるのだろうか。

かつら最大手で欧米やアジアでも業務展開するアデランスが、20カ国・地域の成人男性を対象に実施した目視による薄毛率調査では日本人は26・05%で14位だった。1位はチェコの42・79%。2位以下はスペイン、ドイツ、フランスとヨーロッパの国が続いた。他のアジア諸国はすべて15位から20位にランクされ、欧米に比べてアジアには薄毛が少ないことがわかった。

薄毛には遺伝的な要因が強く働き、日本人は比較的「はげにくい遺伝子」を持つと言えるが、一方で日本では昭和57年の第1回調査で15・7%だった薄毛率が平成16年には11ポイントも上昇している。アデランス広報室は「食事の欧米化や社会生活のストレス増加、高齢化などが原因と考えられる」と分析する。

薄毛は環境の影響も大きく、はげ防止には生活習慣の改善が欠かせない。様々なグローバル化は日本人の特性をかき消そうとしているとも言えるのだ。



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