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若手が巻き起こすルネサンス
時代小説の専門誌「KENZAN!」創刊
  東京朝刊 by 上塚真由
藤沢周平さんの小説が人気を呼び、映画でも時代劇の新作が評価される中、時代小説の専門誌「KENZAN!」(講談社)が今月、創刊された。時代小説に限った雑誌の発刊は異例。若い作家にも活躍の場を与え、時代小説の分野で新たな潮流を起こすのが狙いだ。

時代小説の専門誌「KENZAN!」

キャッチコピーは「ニューウエーブ作家たちが巻き起こす時代小説ルネサンス」。荒山徹、畠中恵、岩井三四二各氏ら40代の作家の作品が並ぶ。荒山さんの「柳生大戦争」は13世紀末の朝鮮半島と日本を巻き込んだ伝奇小説。また畠中さんの「ちよこれいと甘し」は明治期を舞台に描いた“スイーツ文明開化”の物語。かつて“新人類”と呼ばれた世代の作家らしい自在な発想で描かれた作品が多いのが特徴だ。

また一方で、故白石一郎氏の単行本未収録作品や、時代考証に詳しい平岩弓枝さんのエッセー、江戸研究の第一人者、石川英輔さんのコラムなども収録、時代小説の原点もおろそかにしない。

ターゲットは50代読者。福田美知子編集長は「これまで時代小説といえば、定年退職後の読み物というイメージが強かったが、最近はむしろ50代の読者が一番多い。恋愛小説や冒険小説など、さまざまな小説に慣れ親しんできたために、ジャンルを超えて面白い小説に感動できる素地があるのでしょう」と話す。

ここ数年、時代小説の分野は確実に活気づいている。人気の藤沢周平作品では今月『藤沢周平未刊行初期短篇』(文芸春秋)が発売されたほか、木村拓哉主演の映画「武士の一分」(山田洋次監督、来月公開)も話題を呼ぶ。また、畠中さんの『しゃばけ』(新潮社)シリーズは、文庫本とあわせて88万部を突破するなど、若い読者にファンを広げている。

ただ、こうしたブームに出版界が追いついていない、と福田さんは語る。一般の小説誌で時代小説が特集されるのは年に1度か2度で、若手がじっくりと作品に取り組む機会は少ない。「KENZAN!」では150枚前後の中編を一挙に発表。「作家も意気に感じてくれている。実験的な作品を掲載したり、若手作家を発掘したりと挑戦を続けていきたい」と意気軒高だ。年3回刊行で、第2号は来年3月刊行予定。



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