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どうせならいい物を… 高級品に人気シフト
こだわりもっと“完熟” 11/16 ボージョレ・ヌーボー解禁 
  東京朝刊 by 頼永博朗
晩秋の風物詩として定着した感のあるフランス産新酒ワイン「ボージョレ・ヌーボー」の季節が近づいている。今年の解禁日は11月16日。輸入量はほぼ昨年並みと見込まれているが、消費者のヌーボーへの「こだわり」はより強まり、高価格、高付加価値の商品に人気が移りつつあるようだ。

毎年、11月第3木曜日が解禁日のボージョレ・ヌーボー。午前0時の解禁に合わせ、カウントダウンとともに「乾杯」で盛り上がる光景はすっかりおなじみに=昨年11月17日

複数購入が多数
メルシャンが今年まとめた統計によると、ボージョレ・ヌーボー購入者のうち、1シーズンに2、3本買う人は23・7%、4本以上も30%近くを占め、複数購入者は半数を超える。

品ぞろえも変わってきた。目立つのは、通常のヌーボー商品より生産地が限定された「ヴィラージュ・ヌーボー」と呼ばれる商品。サントリーは今年初めて、販売計画量を通常のヌーボーより増やした。大手メーカー各社も、取り扱いを拡充させている。

サントリーワイン事業部企画部長の田中俊幸さんは「通常のヌーボーより300〜400円高いが、より凝縮感のある味わいが楽しめる。通常のヌーボーでは飽き足らない人が増えたことや、景気の回復感から『どうせならいい物を』という心理が働いている」と話す。

このほか、各社は「酸化防止剤無添加」や「有機農法」といった「自然派」商品をはじめ、「ドメーヌ」(生産から出荷までを行う自社畑の所有者)▽「ヴィエイユ・ヴィーニュ」(樹齢の古いブドウ木)▽「単一畑」などをそろえ、「ワンランク上」を売り込む。

全て日本人向き
日本は今や、世界最大のボージョレ・ヌーボー輸入国となった。浸透した理由には、時差の関係で主要国の中で最も早く飲めるという「優越感」に加え、解禁日というイベント性が季節行事を尊ぶ気質や初物を珍重する食文化に合っていることが、指摘されてきた。

また、「渋みが少なく、フレッシュでフルーティーな味わいが、日本人の味覚に合っている」とサントリーの田中さん。何から何まで日本人向きにできているヌーボーは、普通のワインとは別物なのだ。

ワイン業界もヌーボーは別格扱い。年間2000万ケース(1ケースは750ミリリットルボトル12本分)のワイン市場のうち、ここ2年は100万ケース前後をヌーボーが稼ぎ出している。短期間で一定の利益を確保できる“おいしい”商材だけに、「販売数量が多少減っても、消費者のこだわりが強まれば単価は上がり、売り上げはとんとん」(業界関係者)。せっかくの「にわかワインファン」を日常的なワイン消費者として取り込めずにいる理由は、こんな売り方にもありそうだ。

日常化に苦戦
昨年のヌーボー市場規模はワインブームのピークだった平成10年の約2・4倍に達した。一方、メルシャンによると、日本人1人当たりのワイン消費量は10年前の約2倍に成長したものの、平成10年の2・36リットルから16年は1・79リットルまで下落。航空運賃がかかる割高なヌーボーは飲んでも、日常的にはワインを口にしない傾向が強まっている。

ワインと食の情報誌『ヴィノテーク』にコラムを連載しているワインライターの葉山考太郎さんは、「ボージョレ・ヌーボーは単独で飲むものというイメージが日本では固まり、『ワインは食事と一緒に』という基本から外れてしまった。それがワインの日常化につながらない理由の1つ。もっと季節感のある食べ物と合わせて楽しめば、ワインは1年中飲めるお酒に変わるはず」と話す。

国内のワイン市場は今年、ようやく上向きの兆しがあるという。そんな追い風に乗って、あのお祭り騒ぎが、1カ月後にまたやってくる。
65%の男女 「ヌーボー好き」
民間の酒文化研究所が昨年11月に行った調査によると、週1回以上、酒を飲む成人男女の65%が「ヌーボーワイン」を「好き」と回答した。「好き」な理由は、「時期が決まっているので友人との飲み会のいい口実になる」(20代女性)、「毎年購入して集めているラベルの枚数と、社会人としての年輪を重ね合わせてしまう」(20代男性)など。逆に「嫌い」な理由は、「特別感というよりイベント感の方が強くて、『本当においしいの?』って感じ」(20代女性)、「宣伝に踊らされているだけ」(40代女性)などだった。



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