CD販売大手、タワーレコード傘下のナップスタージャパン(東京)は3日、国内初となる月額定額聴き放題の音楽配信サービス「ナップスター」を同日午後10時に始めると発表した。洋楽が大半の約190万曲を用意。インターネットを通じてパソコンに取り込む仕組みだが、NTTドコモの携帯電話や音楽プレーヤーに転送して外出先でも楽しめる。「iPod」の人気で先行するアップルコンピュータや、携帯電話向け音楽配信「着うたフル」などライバルとの市場争奪戦が激しくなりそうだ。
聴き放題サービスは会員登録制で、何曲でもパソコンにダウンロードでき、月額1280円で提供する。携帯電話や携帯音楽プレーヤーにも転送できるタイプのサービスは月額1980円で提供。ただ、退会するとダウンロードした楽曲がすべて聴けなくなる。楽曲ごとに購入する場合は1曲150〜200円になる。
音楽提供はソニー・ミュージックネットワークや東芝EMIなど276社が参加。米マイクロソフトの「ウィンドウズ」と著作権保護技術に対応した機器で聴くことができる。タワーレコードの筆頭株主であるドコモの幹部は同日、「次のシリーズからたくさん対応したい」と断言した。
ナップスターはこれまで、欧米などで展開してきたが、アジアでは初めての試みとなる。都内で同日会見した米ナップスター幹部は「海外では毎日150万曲以上がダウンロードされている。世界2位の音楽市場の日本は大きなビジネスチャンスだ」と鼻息が荒い。
一方、迎え撃つライバルは冷静に受け止めている。人気の携帯音楽プレーヤー「iPod」に転送して外出先でも聴けるアップルは「音楽配信のシェアは過半を超えている。相手が定額でも負ける気はしない」と強気だ。「モーラ」を展開する最古参のレーベルゲートは「音楽購入者の7割が邦楽を選択する」と指摘。ソニー系の強みを生かし、邦楽の品ぞろえは国内最大で、オリコンのヒット曲の6割以上をカバーするなど、他社との違いを強調する。
ただ、音楽配信サービス全体の利用率は約14%(NTTレゾナント調査)と少ない。その最大の理由が価格だ。今回のナップスターの“価格破壊”が、市場拡大につながるとの指摘もあり、マイクロソフトも追随を検討している。
その半面、成長著しいのが携帯電話向けだ。1曲315円とパソコン経由よりも高いが、KDDI(au)のダウンロード数は6000万曲を超えた。ドコモもナップスターと組む一方、携帯向けの強化も急いでいる。ソフトバンクの孫正義社長は「携帯は携帯、音楽は音楽」と述べ、携帯とiPodのセット販売に活路を求める。
各社の戦略はさまざまだが、ナップスターの市場参入で、有力コンテンツ「音楽」をめぐる流通経路が、ネット配信に大きく傾斜し始めることは間違いなさそうだ。