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「キッザニア東京」
「エデュテインメント」 娯楽まじえて“オトナ体験” 
  東京朝刊 by 津川綾子
教育(エデュケーション)と娯楽(エンターテインメント)をかけあわせた造語「エデュテインメント」。この秋、このエデュテイメントを掲げ、楽しい経験を入り口に学びを促す施設や私塾が相次いでオープンした。楽しむことで興味を喚起し、子供たち自らが「学びたい」と意欲的にもなれるという。

ユニホームを着ての楽しい仕事体験。だが、落ち着きのない2歳の男の子には「今はお仕事をしてるのよ。ちゃんとお話を聞いて」とスタッフから教育的指導も=東京・豊洲のキッザニア東京

キッザニア
本物そっくりのミニチュア全日空機。小さな消防車が走り、「モスバーガー」の店では低い作業台で子供たちがエプロンと帽子姿でハンバーガーを作る。

実在する企業や公共サービスのミニチュアオフィス約50業種が集まる仕事体験型アミューズメント施設「キッザニア東京」が今月5日、東京・豊洲にオープンした。

子供たちは、実際に大人たちが使用しているものとそっくりの制服や道具を使い、ピザ屋でピザを作り、病院で人形相手に開腹手術や新生児の世話にあたる。30分ほど働けば通貨「キッゾ」で給料がもらえ、キッザニア内で買い物をしたり、銀行に貯金できたりする。キッザニアは、楽しい体験を通じて学ぶ機会を提供する「エデュテインメントタウン」を標榜(ひょうぼう)している。

「実際にユニホームを身に着け、リアルなごっこ遊びを楽しむ。子供たちは遊びながら、人と協力することや働くことの大切さを身をもって知るようになる」と運営主体のキッズシティージャパン、油井元太郎企画部長。

実際の利用者の声を聞いた。ジャンボジェット型の全日空機のパビリオンでキャビンアテンダントの仕事を終えた幼稚園児の女の子(6)は、「アナウンスが難しかったけど楽しかったぁ」といって、8キッゾの給料を母親に自慢げに見せた。

一方、女の子の母親(36)は「携帯が欲しくても手に入れるにはどれだけ働かなければいけないか、それを知ってもらいたかった。稼いだキッゾではレンタル携帯代にも足りないでしょうが、それも経験だと思います」

いわばキッザニアは単に仕事を楽しむだけでなく、世の中の“厳しさ”も学び取ってほしいという親のニーズにも応えるもののようだ。

ヒーローズ
「コミュニケーションって本当に大切なんだ」。身ぶり手ぶりをまじえ、プロ野球千葉ロッテマリーンズ監督のボビー・バレンタインさんが話し出すと、子供たちは真剣なまなざしで耳を傾け始めた。バレンタインさんは野球のサインあてクイズなども交え、子供とその親に向かって、話を聞き相手の表情や手ぶりを注意深く観察する大切さを伝えた。

これは今月15日に正式開校した私塾「心拓塾」の一コマ。「子供に興味を持ってもらうためにはアメニティ性が必要」と、サックス奏者の渡辺貞夫さんやテニスプレーヤーの伊達公子さん、レーサーの片山右京さんらスポーツ、音楽、芸能界で活躍する人々を講師に迎え、情操や倫理観など「心の教育」を行っていく。

運営主体の「ヒーローズエデュテイメント」の秋沢志篤会長は「それぞれの分野を極めたヒーローから見つめられ、直接話を聞くことで、子供たちは胸をおどらせ、心を開いてくれる」と講師に著名人をそろえた理由を語る。

バレンタインさんの講義を受けた東京都世田谷区の勝呂祥己(しょうき)くん(10)は、「テレビで見た有名な人に話を聞くと、心に残り、やる気がでる」。父親の哲也さん(44)も「昔は上意下達で目上からの指示は絶対だったが、今はそんな教え方では伝わらない。エデュテインメントの考え方は時代にあっているのでは」と話した。

メディア発達が影響
なぜ今、「エデュテインメント」をかかげ、教育に娯楽性を持たせる必要性があるのか。千葉大学教育学部の藤川大祐・助教授(教育方法学)は「メディアの発達の影響が大きい」と話す。

「学びの場は学校のみという時代から大きく変わり、現在はインターネットで何でも調べられるなど、いつでもどこでも学習ができる時代となった。学びの機会が貴重ではなくなった現代では、子供たちにいかに学ぶことを動機づけるかに骨を折ることが大切になっている」と話す。メディアを介して楽しみながら学習することに慣れた子供たちにとっては、黒板とチョークだけではつまらなくなりがち、というわけだ。

また、「楽しい学びの機会が主体的に学ぶことのことのきっかけになることも期待できる」とも。刺激に満ちた現代だからこそ、子供の興味を引く仕掛けも必要になってきているといえそうだ。



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