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足かけ10年
フジ系「泣きながら生きて」中国シリーズ 最終章へ
  東京朝刊 by 安藤明子
「日本で暮らす中国人留学生のありのままを記録して中国の人に伝えたい」。そんな思いを持った1人の中国人女性がフジテレビのスタッフの協力で制作し、日中両国で大きな反響を呼んできたドキュメンタリー“中国シリーズ”が、11月3日の金曜プレステージ「泣きながら生きて」(後9・0)で幕を下ろす。女性の名前は張麗玲。現在はCS放送「大富」の社長を務める彼女と、フジのプロデューサーの横山隆晴との出会いから11年。最終章の取材年月は足かけ10年にわたった。

平成14年、東京・日暮里駅で13年ぶりに再開したときの丁さん夫婦。現在は上海で暮らしている

「泣きながら−」は上海(母)、東京(父)、ニューヨーク(娘)での離散生活を余儀なくされた中国人の丁さん一家の10年間の壮絶な記録。文化大革命の嵐の中で勉学をできない時代を過ごした父は日本の大学進学を目指し、多額の借金をして単身来日するも、思いもかけない形で不法滞在者に…。再出発の夢を絶たれた父は借金返済後も東京で働き、来日時、小学4年だった娘を海外の一流大学へ留学させるための学費稼ぎに専念する。

念願通り、娘はNYに留学。母は上海の工場で働きながら娘に会うためビザ申請を繰り返し、5年後にNYへ。それぞれNYに向かう途中、不法滞在で日本から動けない父と再会を果たす。娘は8年ぶり、妻は13年ぶりだが、いずれも飛行機の乗り継ぎ時間を利用しての慌ただしいものだった。

張麗玲

3人家族の“3都物語”を通して家族の絆(きずな)の深さ、信頼の大切さが伝わってくる。「国を超えて物事を考えないと何も変わらない、国を超えるとは時代(歴史認識)を超えることだと常々話している張さんの思いが総括された作品になった」と横山が言えば、張も「これ以上のものは撮れないと思った」とシリーズ集大成への充実感を話す。

数々のドキュメンタリーを手がけ、昨年は「桜の花の咲く頃に」で第1回放送文化大賞テレビ部門グランプリに輝いた横山と張の出会いは、張がOL生活を始めた半年後。「実社会に出て初めて中国で教えられてきた日本と実際の日本との間にものすごく差があると感じた」という彼女が、日本で頑張る同胞たちの現実を記録として残したいとの一念で人づてに聞いた横山のもとを訪れ、「カメラを貸してください」と頼んだのだった。

張の「思いの強さ」にひかれた横山ら数人が“素人”の彼女をボランティアでサポート。平成11年から翌年にかけて中国で放送された10番組が大反響を呼んだため、12年にはフジ系でもゴールデンタイムで放送が決定。これまでに「小さな留学生」「若者たち」、張自身の公私を追った「中国からの贈りもの」など5作を放送、「感動した」「これこそ真の日中交流」と大好評を博した。

フジは今作を芸術祭参加作品として放送し、中国シリーズは終了するが、張は「中国で放送できなくても何か意味があると思って記録した作品が日本でも放送されるなんて夢のようだった。感動を伝えたいという気持ちは変わらないので、今後はドラマや映画も作ってみたい」と話している。 

                



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【プロフィル】張麗玲
女優として北京で活躍した後、「世界を見てみたい」と平成元年来日。東京学芸大、同大学院を卒業した7年、大倉商事入社。平日の夜と休日を利用してドキュメンタリー制作に取り組む。取材した中国人留学生は315人にのぼる。10年、中国中央電視大台からの依頼で日本の窓口となるCS放送会社「大富」を設立、社長に就任した。