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気になる会社の処遇… 少ない「モデル」
育休、取りたい 悩む男心 
  東京朝刊 by 津川綾子
「できることなら、育児休業(育休)を取得し、育児参加をしたい」と考えている父親は少なくないという。だが、働き盛りの男性が会社を長期間休むのは「その後の処遇や人間関係の上で不安」と感じ、なかなか踏み切れないのが実情のようだ。その結果、男性会社員の育児休業取得率は0・5%に留まり、実際に取得したロールモデル(お手本)が身近にいないために、取得の勇気を出せないという“悪循環”も起きている。そこで実際に育児休業を取得した男性に話を聞いてみた。

職場の机に子供の写真を飾る高橋さん=東京都墨田区の「花王」すみだ事業場

働く妻を援護
日本ユニシスの関連会社の「日本ユニシス・ソリューション」に勤める友枝研さん(39)は、長男(6)と長女(3)の2度にわたり、妻の育休があけた後の1歳4カ月から1歳6カ月になるまでの2カ月間、会社の制度を利用し育休を取得した。

妻は職場の同僚。通勤には80分かかる。「仕事を続けたいと考える妻が、そうあるためには育児分担が必要」と、その答えは明快だ。そして何より、「せっかくの子育てのチャンスを逃すのはもったいないと思った」という。

5年前の長男の育休の際は「本当に大変だった」と振り返る。夜泣きのたびに抱っこしてオロオロとあやし、妻の帰りを待ちわびた。毎日の夕食の献立にバリエーションをつけるのに苦心したし、公園に行けば「リストラ?」という視線を受けた。長女の時はお母さんたちの会話に混じろうと無理をするのもやめ、気楽に子育てに臨むことができたという。

今、「育休を取得してとてもよかった」と言い切る。「日中一緒に過ごすことは大きいですよ。昨日まで乗れなかった車のおもちゃにまたがることができるようになったり、フォークの使い方が昨日より今日…とだんだん上手になってくる。そんな日々の成長が実感できる」。育児休暇が明けた今も、夕方のお迎えや夕食の準備、風呂、寝かしつけなどを、妻と分担してこなしている。

日々の成長実感
花王の高橋秀和さん(38)は長男が生後5カ月を迎えた4年前、職場復帰する妻と交代で育休を2カ月取得した。

「それまでは妻から『今日はこんなことがあったのよ』なんて子供の成長を報告で聞いても、実感はイマひとつでした。でも自分で子供と向き合うと、『こんなに体は小さいのに、うんちは大きい』とか、小さなことにも感動できた。育児は仕事をするより大変でしたが、実に楽しかった」と振り返る。

育児経験を講演することもあるという高橋さん。熱心に聞き入る男性会社員の姿も多いが、「男性からよく受ける相談は、子育てのことよりも、『会社(の処遇)は大丈夫でしたか?』『復職できる場所はあるものでしょうか…』といった会社員としての不安についてです」と苦笑する。

それほど大半の男性にとって、職場の理解が育休取得の大きなハードルと感じているようだ。友枝さんも「(たとえ法律で取得できるとされていても)上司の理解が得られないと言い出しにくい面もある」と感じたという。

ベネッセ次世代育成研究所が昨年8月に実施した、乳幼児を持つ父親約3000人を対象にした調査の結果を分析した大日向雅美・恵泉女学園大学大学院教授(発達心理学)は、こう指摘する。「(乳幼児をもつ)父親の多くはもっと子育てにかかわりたいと希望している。だが、一家を支えるためにはやはり、めいっぱい働かざるをえないと考えているようだ」

育児参加求める女性
働く女性は、出産・育児に関し、夫の協力を切実に求めているようだ。

全国8都市のオフィスで配布されているフリーペーパー「シティリビング」が読者1271人を対象に「子供を産み、育てるのに必要なこと」を聞いたところ、「パートナーの協力」が「愛情」に次いで2位となった。

子供を持つことによるマイナスイメージを聞くと、既婚女性の67・3%、独身女性の58・2%が「仕事との両立が難しいこと」と回答。行政による少子化対策にのぞむ項目として、「父親が積極的に育児参加する風土づくり」と答えた割合が既婚女性の55・3%、独身女性の56・1%にのぼった。



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【用語解説】育児休業
平成4年に施行された育児休業法(11年施行より育児・介護休業法)により、事業所の規模にかかわらず、申し出れば男女を問わず子育てのために会社を休むことができる。17年4月の同法改正で育児休業期間がそれまでの「原則、子供が1歳になるまで」から、保育園に入れなかった場合には最長1歳6カ月まで取得できるようになった。また雇用保険法により、育児休業中は賃金の40%(うち10%は復職後半年経過後に支給)の育児休業給付が支給される。