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河内屋紙 
「公衆浴場背景画」ポスター 密かにヒット
  東京朝刊 by 山口暢彦
芦ノ湖や山中湖、本栖湖からみる富士山の姿…。昭和30年代から30年間、9000点にのぼる公衆浴場背景画をペンキで描き続けた絵師、佐怒賀次男(さぬが・つぎお)さんの作品を再現したポスターが、主に通信販売を通じ、シニアの間で密かな“ヒット商品”となっている。

「公衆浴場背景画」ポスター=東京都北区の「河内屋紙」

水に強い合成紙を使い、裏面をぬらせば、タイル壁にもプラスチック壁にもピタリと張れる。一瞬にして風呂場が昭和のレトロムード漂う銭湯へと早変わりするというわけだ。はがすのも簡単で、その日の気分で景色を選べる。

製造している「河内屋紙」(東京)は紙の卸売業。もともとメーカーの製品をほかへ売るのが本業だ。同社初のオリジナル製品に乗り出しのは、営業二部の中村頼光・副部長の強いプッシュがあったから。きっかけは、一人息子が1歳になるかならないかのころ、一緒に風呂に入って、壁に張った動物のイラストをみながら、「これはパンダ」「あれはキリン」という“会話”を楽しんだことだった。

「子供とお風呂でコミュニケーションをとるには、壁に張るイラストがぴったりなのではないかと思ったんです」。考えついたのが絵と童謡を描いた紙を張るというアイデア。「子供に歌ってやりたくても歌詞を忘れてしまう。そんなときに役立つのでは」。さっそく児童書を発刊している大手出版社に企画を持ち込んだが、採算面などで実現に至らなかった。

「どんな商品なら売れるのだろう」。ヒントを得ようと、インターネットで「銭湯」や「公衆浴場」を検索しているうちに、「公衆浴場背景画保存会」を見つけた。保存会では、いったん道を離れた佐怒賀さんに平成3年以降、再び絵筆をとってもらい、背景画保存のため、90センチ×180センチサイズの“縮小版”に描き直してもらう取り組みをしていた。その数は150点に上っていた。

中村さんは保存会の地道な努力に触れ、背景画が日本の大切な文化だという思いを強くしたという。「背景画を後世に伝えるのに役立ちたい。そんな気持ちでポスターを販売しています」と笑った。



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ポスターは1枚3700円(税込み)。問い合わせは河内屋紙(電)03・3916・0251