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脱「贈答」、限定品など武器
百貨店 通販で新境地
   東京朝刊 by 頼永博朗
百貨店の通信販売が広がりをみせている。百貨店のインターネット通販といえば、中元・歳暮の贈答品という印象が強いが、店頭では扱っていない化粧品のほか、有名ブランドの衣料品や食料品など品ぞろえが充実。また、古くからある通販カタログも、ファッション誌並みの編集でイメージチェンジを図っている。

百貨店が手がけるカタログ通販誌。出版社と提携するなどファッション誌並みの作りで、新たな顧客の開拓を狙う
百貨店が手がけるカタログ通販誌。出版社と提携するなどファッション誌並みの作りで、新たな顧客の開拓を狙う


隠れた商品サイトで
大丸は、百貨店の化粧品売り場で扱っていない化粧品を販売するネット通販「marucollet」(マルコレ)を12月に始める。アイテム数が少なく、百貨店で展開することができない20ブランド、300点を販売。メークアップアーティストや皮膚科医の勧めるスキンケア情報を紹介するサイトも運営する。

また、購入前に商品を試したいという顧客のために、直営のサテライトショップをまず東京都千代田区に出店し、その後、大阪、博多、札幌にも開く計画だ。

国内の化粧品市場約2兆円のうち、百貨店の売り上げは約1割。広報・IR部では「百貨店で扱い切れていない隠れたコスメにも優れた商品はある。サイトで人気が出た商品については、店頭販売も検討する」という。

高島屋では今夏、新たに開設したサイト「e百貨店」で、有名ブランドの衣料品や服飾雑貨など約100銘柄を掲載。また、食料品や日用品についても、海外の高級ブランドを中心にそろえ、来春には本格稼働させる。

雑誌と提携
三越は今年に入り、出版社と提携したカタログ通販を展開し始めた。5月には、スローフードやロハスといった新しい生活様式を提案する『ソトコト』(木楽舎)の別冊『ロハス キッズ』(380円)の誌面に子供に安全、安心な雑貨を中心とした商品を掲載。書店で10万部を販売した。11月に2冊目を試みる。

また、中高年層を読者に抱える『散歩の達人』(交通新聞社)とも連携し、誌名の題字を表紙に入れた特別カタログを6月号の付録にした。今月25日発行のムック(別冊)には、2冊目を折り込んでいる。通信販売事業部長の川上博史さんは「編集者の視点で掲載商品を選んでいることで、消費者からの反応もよい」と話す。

高島屋が9月に創刊した通販誌「アイトゥロア」は、既存の通販カタログの中で扱っていたプライベートブランドを独立させた。読み物や自然な写真を盛り込み、ファッション誌に近い作り。通信販売事業本部次長の井上純さんは「見応え読み応えのある編集で、消費者の関心をひきたい」と話す。

細かいニーズ対応
96社、264店が加盟する日本百貨店協会も、こうした各社の取り組みを支援し始めた。今月には、消費者向けのサイト「百貨店ワールド」を開設。加盟百貨店の催事・イベント情報などに加え、各社のネット通販を掲載している。

企画開発部によると、「各百貨店には、従来の中元・歳暮ばかりでなく、主力のファッションなどを年間を通じて売りたいという思いがある」という。

通販市場は、特に「地方の特産品」や「こだわりの日用品」など、百貨店が対応できないきめ細かな需要を狙った分野で急成長している。市場で後れを取ってきた形の百貨店業界は持ち味の「高級感」で、新たな消費を掘り起こしたい考えだ。

拡大続ける市場
通販市場の規模は拡大を続けている。日本通信販売協会のまとめによると、平成17年度の通販業界全体の売上高は推計で3兆3600億円。前年度比3200億円増え、調査開始以来、最高額を記録した。

一方、日本百貨店協会によると、百貨店業界のネット販売売上高も12年度の年間計9億7000万円から、17年度は同121億円と6年間で12・5倍に成長している。しかし、店舗販売を含めた総売上高に占める割合は0・2%にとどまっているのが現状で、ネット通販の拡充は百貨店業界の課題となっている。

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