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さえない男を俳優、マイケル・キートンが好演
「ライフ・イズ・ベースボール」Rソックスに人生重ねる
  東京朝刊 by 宝田茂樹
人生とはとかく思い通りにいかないものだ。予想は覆される。期待すれば裏切られる。祈りはかなえられない。しかし絶望するなかれ。失敗は成功のもとだし、捨てる神あれば拾う神あり、ともいう。どんな困難に身をさらされても、希望を失ってはいけない。

「負け犬球団」レッドソックスに自分を重ね合わせているニック役のマイケル・キートン
「負け犬球団」レッドソックスに自分を重ね合わせているニック役のマイケル・キートン

舞台は1986年秋のニューヨーク。街はワールドシリーズの話題で沸き立っていた。1918年以来、68年間も優勝から遠ざかっていたレッドソックスが、ニューヨークメッツとの優勝争いに臨んでいたからだ。

さえない中年男の劇作家、ニック(マイケル・キートン)は、子供のころからレッドソックスの熱狂的ファンだった。優勝を意識するたびに絶望のどん底に突き落とされてきたレッドソックスの歴史は、私生活も仕事もいまひとつ真剣になりきれず、劇作家としての成功もつかめず、浮気がばれて妻子に愛想をつかされたまま反発もできないニックの負け犬人生と重なるところがある。

しかし、レッドソックスの優勝決定戦と合わせるように、ニックは一念発起した。これまでのコメディー路線とは趣を異にしたシリアスなドラマを上演して、起死回生の一発勝負に打ってでることにしたのである。

人生の行く手にはさまざまな障害が横たわる。七転び八起きという言葉を地でいくレッドソックス。その年もまた、2点リードして迎えた延長十回の裏、ツーアウトで走者なし、あと1人を倒せば68年ぶりの優勝が転がり込んでくるという土壇場で、3連続ヒットを打たれた末に一塁手が痛恨のトンネルをして逆転負けを喫する。

越えられない、と思ったときが負けである。主演俳優が、脳にもぐりこんだ寄生虫のためにセリフがまともに覚えられなくても、酷評で知られる演劇批評家のスティーヴン・シュウィマー(ロバート・ダウニーJr.)が公演にやってくることが分かっても、ニックはテレビ中継で奮闘するレッドソックスとともに、栄光をつかもうと手を伸ばす。悲哀の陰にうずくまるささやかな歓喜が、胸をしみじみと温める物語だ。マイケル・ホフマン監督作品。28日から東京・新宿のK’S cinemaを皮切りに全国公開。

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