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原作はベストセラー小説
映画「プロヴァンスの贈りもの」南仏の光で再生する人生
    東京朝刊 by 岡田敏一
4日公開の恋愛ドラマ「プロヴァンスの贈りもの」(監督・製作=リドリー・スコット)は、冷酷無比な英の金融トレーダーが、ワインをきっかけに故郷の南仏プロヴァンスで人生の意義を再発見する物語だが、単なる恋愛ものではなく“人生で最も大切なものは何か”という根源的な問題を提示する。甘さ控えめでひねりの利いた映画で、スコットらしいこだわりが随所に感じられる。大人が楽しめる作品だ。

幸せな人生とは何かを問いかける「プロヴァンスの贈りもの」
幸せな人生とは何かを問いかける「プロヴァンスの贈りもの」

原作は全世界で約500万部のベストセラー小説となった『南仏プロヴァンスの12か月』などを執筆したピーター・メイルの同名小説。スコット監督とは30年来の友人だという。映画化にあたってはフランス人スタッフを多数動員し、仏で撮影した“ハリウッド産フランス映画”だ。

英ロンドンの金融街シティでやり手の為替トレーダーとしてならすマックス(ラッセル・クロウ)の元に、10年以上疎遠にしていたプロヴァンスに住むおじのヘンリー(アルバート・フィニー)の訃報(ふほう)が届く。

少年時代のマックスは毎年、ヘンリーが経営するシャトーでバカンスを過ごした。美食家でちょっぴり皮肉屋で、人付き合いを好まずワインづくりに生涯をささげた彼から多くの人生哲学を学んだマックスだが、今の彼にはクールに効率良く大金を稼ぐこと以外、興味がない。

ヘンリーに最も近い血縁者ということで、彼の遺産を相続することになったマックス。相続した遺産を売却し、ロンドンにとんぼ返りするつもりで、久々にプロヴァンスを訪れたのだが、そこで鼻っ柱の強い地元のレストランのオーナー、ファニー(マリオン・コティヤール)と出会う…。

「グラディエーター」(2000年)で演じた古代ローマ帝国の無敵の剣闘士役や「ビューティフル・マインド」(01年)での数学者役など、最近はさまざまな役柄に果敢に挑むオスカー俳優クロウ。今回は、金はうなるほどあるが、誰にもその生き方を尊敬されない哀れな為替トレーダーが、故郷での懐かしい日々を回想し、人間性を回復していく様を軽やかに演じる。仏の人気女優コティヤールとの相性もピッタリだ。

「エイリアン」(79年)や「ブレードランナー」(82年)でおなじみのスコット監督とクロウは「グラディエーター」でタッグを組んだ仲だが、クロウは「2人ともこの手のタイプの作品を撮ったことがなかったし、一度こういう作品を撮りたいと思ってね。僕たちにアクション映画を期待する人も多いと思うけど、他人のために映画を作ってるわけでもないから」と話す。

クロウによると「マックスがヘンリーおじさんから教わった『競争は楽しむべきものであり、勝つための過程だけが大切ではない』という教訓」が映画の根幹を成すテーマだが、「軽い味わいの娯楽作品ではない」。

ハリウッドの娯楽大作のような分かりやすい盛り上がりには欠けるものの、繊細な語り口には好感が持てる。何より柔和な日差しに包まれた緑豊かなプロヴァンスの絵画のような風景が素晴らしい。光の使い方のうまさに定評があるスコット監督らしい映像美だ。

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