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アンドリュー・ラウ監督 ハリウッド、デビュー作
映画「消えた天使」 凶悪な性犯罪追う緊張感
    東京朝刊 by 岡田敏一
米国では、法律で性犯罪前歴者の個人情報の登録を義務付け、ネットで情報を公開している州もある。性犯罪は再発率が高いためだ。「消えた天使」(アンドリュー・ラウ監督、4日公開)は、前歴者の監視を続ける監察官が凶悪な性犯罪者と対決するサイコサスペンス。香港映画「インファナル・アフェア」3部作を手がけたラウのハリウッド・デビュー作は異様な緊迫感に満ちている。

「消えた天使」はアンドリュー・ラウ監督のハリウッドデビュー作
「消えた天使」はアンドリュー・ラウ監督のハリウッドデビュー作

18年間、性犯罪登録者の監視を続け、近く退職するベテラン監察官バベッジ(リチャード・ギア)。実は、仕事にのめり込み過ぎるエキセントリックな性格が職場や前歴者の間で嫌われ、事実上、解雇されるのだ。

そんな彼が、後任となる若い女性監察官ラウリー(クレア・デインズ)の指導を任された直後、10代の少女の失踪(しつそう)事件が発生する。バベッジは前歴者の仕業と確信し、怪しそうな人物を片っ端から調べ上げる。その強引なやり方に反発するラウリー。しかし新たな誘拐事件が起こり、事件は異様な方向に…。

ハリウッド・スターが出演するハリウッド映画なのだが、あっけらかんとしたノリの良さや明るさは皆無。ヒヤリとしたカミソリのような緊張感が漂って、見ていると息苦しくなってくる。それも当然だ。鍵となる犯罪が、生きた人間の手足を切断して性的興奮を得る“切断マニア”なのだから…。かなり陰鬱(いんうつ)な作風といっていい。

ギアの演技も、これまでの伊達(だて)男のイメージとは正反対。ぶっきらぼうで性格異常の監察官を演じ切っている。前歴者の手口を詳細に説明し、新聞に載っている類似事件の見出しを丸印で囲み続けるバベッジに、ラウリーが「もうやめて」と泣きながら絶叫する場面の壮絶さ…。

砂ぼこりが舞う荒涼とした砂漠地帯の田舎町(撮影場所はニューメキシコ州)の風景も作風にぴったり。「怪物を追うものは、自らが怪物にならぬよう注意せねばならない」というテーマが、本作を単なる勧善懲悪ものとは一線を画す作品に仕立て上げている。日本先行公開。ハリウッドでの評価が楽しみだ。

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