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各国で異なる鑑賞後の感想
「ブラインドサイト〜小さな登山者たち〜」
    東京朝刊 by 岡田敏一
チベットに住む盲目の少年少女6人が、善意の協力者とともにエベレストの北側にある標高7000メートルのラクパリをめざす−。そんな挑戦を追う英ドキュメンタリー映画「ブラインドサイト〜小さな登山者たち〜」(ルーシー・ウォーカー監督、公開中)は、単に美談を描いているだけではなく、“成功”についての東洋と西洋の考え方の違いなどについても考えさせてくれる興味深い作品だ。

視覚障害者の挑戦を描く「ブラインドサイト〜小さな登山者たち〜」
視覚障害者の挑戦を描く「ブラインドサイト〜小さな登山者たち〜」

世界保健機関(WHO)の調べでは、チベットの人口約250万人のうち、約3万人が盲目か重度の視覚障害者で、他の諸国と比べて比率が高い。

気候や衛生面が原因とされるが、問題はチベットではこうした人たちが社会から孤立していること。前世の悪行が原因で悪魔にとり付かれた人々として忌み嫌われているのだという。

盲目のドイツ人女性教育者、サブリエ・テンバーケンは、自身が開発したチベット語の点字を普及させようと、中国政府の反対を押し切って単身チベットに入国し、当地で初めての盲学校を設立する。

差別的な扱いを受けるなかで、彼女と生徒たちは、盲人として初めてエベレスト登頂に成功した米国人登山家、エリック・ヴァイエンマイヤーを招き、登山のワークショップを開催する。それを機にエリックらの指導のもと、サブリエと生徒たちは雪に覆われたラクパリをめざすことになる。

盲目の6人には、登山家をはじめとするプロのガイドが1人ずつ付く。目のまったく見えない6人が、冬山用の完全装備に身を包み、険しい雪山を手探りでゆっくり登っていく様子は感動的だ。しかし、悪天候や高山病といった問題が持ち上がる。サブリエやガイドたちは、子供たちが山に登ることの意義を自問自答し始める。そして予想外の結末が…。

観賞後の反応は各国で違ったという。「主要国の映画祭を回ったけれど、カナダのトロントでは感動したと拍手の嵐。英ロンドンでは文化的衝突が皮肉っぽく解釈された。米国の人々は映画の内容より、チベットの悲惨な現状に大きな衝撃を受けていた」とサブリエ。単なる感動作とは一味違ったドキュメンタリーだ。

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