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映画「デス・プルーフ in グラインドハウス」
血と美女と笑い! タランティーノ監督に聞く
    東京朝刊 by 岡田敏一
独創的な作品づくりで知られるクエンティン・タランティーノ監督の最新作「デス・プルーフ in グラインドハウス」(9月1日公開)は、反骨精神と娯楽性が見事に一体化した傑作だ。「俺はいつだって俺を興奮させる物語しか映画にしないよ」と自信たっぷりな監督によると、この映画は彼自身の“ジュークボックス”なのだとか。

反骨精神と娯楽性が一体化した「デス・プルーフ in グラインドハウス」
反骨精神と娯楽性が一体化した「デス・プルーフ in グラインドハウス」

時間軸を交差させるカットバックの手法を効果的につかった「パルプ・フィクション」(1994年)でストーリーテリングの面白さを知らしめ、「キル・ビル」(2003年)ではエンディングに梶芽衣子の「怨み節」を炸裂させるなど、非凡なセンスを見せつけてきた。

最新作のタイトルになっている「グラインドハウス」というのは、60〜70年代の米国にたくさんあった、安物のホラーやお色気アクションのような低予算のB級映画ばかりを2、3本立てで上映していた映画館のことだ。自作を「パルプ・フィクション」(三文雑誌)と名付けるユーモアに通じるところがある。

実際に、想像力で低予算というハンデを克服してきたB級映画のチャレンジ精神を本作で見事、蘇らせた。米では4月にロバート・ロドリゲス監督の作品とともに2本立てで上映する徹底ぶりだ。

クエンティン・タランティーノ監督
クエンティン・タランティーノ監督

「最近のハリウッド映画からは独創性がどんどん失われている。デイリー・バラエティー(米業界紙)の世界各国の映画興行収入チャートを見てみなよ。どれも一緒。地球の人口のほとんどが同じ映画を見ているんだ。それも問題だと思わないか?」

その言葉通り、本作はハリウッド大作に慣れた映画ファンへの挑戦状のようでもある。

舞台はテキサス州の田舎町。デス・プルーフ(耐死仕様)に改造されたシボレーを凶器代わりに、セクシーな美女たちを次々に殺すイカれた殺人鬼、スタントマン・マイク(カート・ラッセル)に狙われた女性4人組が、彼をやっつける−という物語。

お色気と暴力と血しぶきとお笑いが渾然一体となって迫り来る。濃厚なセクシー・ショットと特殊撮影一切なしのハードなカーチェイス。フィルムはわざとボロボロに。途中でモノクロに変わったりもする。女性たちのお下劣なおしゃべりも秀逸。独特の作風とセンスに満ちている。

米黒人ソウルからエンニオ・モリコーネまで、挿入歌の選曲のブッ飛び具合も相変わらず。「今作のテーマはずばりジュークボックス。俺所有のジュークボックス『エイミーちゃん』に入ってた45曲から選んだんだ」

そんな彼が最も好きなミュージシャンは「1位ボブ・ディラン、2位プレスリー、3位フィオナ・アップル(米女性歌手)」だそうだが、映画界における彼の立ち位置は、音楽でいうならフランク・ザッパに近いように感じる。膨大な知識に裏打ちされたジャンル分け不能の超高度な音楽と、ユーモアあふれる社会風刺で知られるアーティストだ。

「俺が映画界のザッパ? それは光栄だね。ザッパのバンドの面々は世界最高の演奏技術で…(以下略)」。ザッパの話を延々と繰り広げるタランティーノ監督、やっぱり奇才である。

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