1981年の初演以来、4年間にわたって米ニューヨークのブロードウェイをにぎわせたミュージカル「ドリームガールズ」が映画化され、17日から日本でも公開される。当時、トニー賞で13部門にノミネートされ、うち6部門を受賞した伝説の舞台だ。
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1960年代から70年代のモータウンサウンド(デトロイトを本拠としたレコードレーベル「モータウン」が発信したブラックミュージック)最盛期を背景に、シュープリームスを思わせる仲良し娘3人組のボーカルグループ「ドリーメッツ」のサクセスストーリーを描く。ショービジネス界の確執や裏切り、公民権運動のうねりなども盛り込まれ、見ごたえは十分。
さらには、全編にわたってのミュージカル仕立てのせりふや振りつけに圧倒されるが、そんな舞台を歌声で彩る女性ボーカリスト3人の生きざまこそが醍醐味だ。
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1962年、米デトロイトに暮らすディーナ(ビヨンセ・ノウルズ)、ローレル(アニカ・ノニ・ローズ)、エフィー(ジェニファー・ハドソン)は「ドリーメッツ」というトリオを組み、音楽で成功することを夢見ていた。そこへ後に3人のマネージャーとなる男、カーティス・テイラーJr.(ジェイミー・フォックス)が現われ、人気のソウル歌手、ジェームズ・アーリー(エディ・マーフィ)のバックコーラスへの参加を持ちかける。またたく間に人気者となるドリーメッツはやがてジェームズから独立。グループ名も新たにザ・ドリームズとしてスターへの道をのぼりつめてゆく
愛に生きる女、耐える女、歌う女、つまづく女、笑う女、泣く女…。エフィーをはじめディーナ、ローレル3人はステージの裏側でさまざまな“女”を経験する。
ディーナはカーティスにその美貌を買われて、エフィの座だったメーンボーカルに抜擢される。下積み時代からカーティスと恋仲だったエフィは許しがたい屈辱を味わう。一方で、3人のなかでも天真爛漫なローレルは、妻子あるジェームズとの愛に夢中。名声を手に入れていくなか、ディーナはカーティスの妻となる。3人の仲は次第にヒビが入り、ザ・ドリームズは名声ばかりの舵のない船のようになる。
女性が3人集まれば多少のいざこざはある。しかし、映画の3人組の関係にはゴシップのような軽さは一切ない。日常の機微を痛々しいほどに歌としてはき出していくからだ。
すごみがあるのはエフィのひと幕。カーティスの子をおなかに宿しての別れ話に「戻ってきて。私を愛して」と満身の力で熱唱するが、妊娠を打ち明けはしない。エフィのプライドと覚悟はそのままこの映画の骨太さになっている。
ちなみにこのエフィを演じる新人女優、ジェニファー・ハドソンは圧倒的な存在感と歌唱力でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた(授賞式は日本時間26日午前10時)。
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一方、女優業での活躍もめざましい歌手のビヨンセがディーナを演じる。直感的に役柄を理解したといい、ザ・ドリームズのメーンの座を獲得するまでの間は「自分の声の一部しか使わなかった。また、ディーナの歌い方は私ととても違うので、抑えながら『ディーナのように』と言い聞かせていました」と振り返る。
大衆の評価が実力の証しとなるショービジネスで脚光を浴びれば、自分で回した歯車なのに止められなくなることもあるだろう。それをエフィは歌で、ローレルは愛情で、ディーナは友情で、食い止めるのだ。
名声におぼれるディーナは、やがて商品化された自分を疑問に思う。そして、ほんとうはどんな自分でありたいのかを問い、新たな夢に向かう。そんなディーナの姿は、演じるビヨンセの人生にも重なる。ビヨンセがいう。
「夢を追うとき、人は、犠牲や代償を顧みず、ただ美しく輝くものだけに向かってつき進みます。ディーナもそう。さまざまな出来事に出合いますが、いつだって夢を手に入れるために進んでいくんです」
ザ・ドリームズだって私たちだって、大切なのは、困難にぶつかったときに夢の在りかを探せるかどうかなのだ!