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勇気与える型破りな人生
「世界最速のインディアン」アンソニー・ホプキンス熱演
2月2日(金) 東京朝刊 by 岡田敏一
63歳で出場したバイクレースで世界最速記録を樹立したニュージーランドの実在のレーサーの物語を描く「世界最速のインディアン」(ロジャー・ドナルドソン監督、写真)が3日から公開される。69歳の名優アンソニー・ホプキンスが型破りなレーサーを熱演している。

「世界最速のインディアン」
「世界最速のインディアン」 勇気与える型破りな人生

ニュージーランド南端の街インバーカーギル。ひとり暮らしの年金生活者バート・マンロー(ホプキンス)の生きがいはバイク。暇があれば、愛車の1920年型インディアン号をいじっている。唯一の理解者は隣家の少年トム(アーロン・マーフィー)だけだ。

若いころからの夢である世界最速のレーサーを目指すため、自宅を担保に資金を捻出(ねんしゅつ)し、世界最速を競うバイクレースが行われる米ソルトレークシティーに向かう…。

単なるサクセスストーリーではなく、マンローの人物描写が鮮やか。ひょうひょうとして、ちゃらんぽらんで徹底した楽観主義者。そのつかみどころのない魅力は出会う人々を“味方”に変えていく。敵対心むき出しだった若い暴走族軍団、ホテルで出会うオカマの従業員、レース場で出会うライバルたち…。船便で送った愛車が壊れたときも、愛車が古すぎて出場基準を満たしていないことが判明したときも、周りの人々がマンローのために奔走する。

監督・脚本・製作のドナルドソンは、1962年のキューバ危機を題材にした映画「13デイズ」(2000年)などを手がけた社会派。ニュージーランド出身で、マンローの物語を30年以上前にテレビ・ドキュメンタリーに仕上げており、映画化が長年の願いだった。

凝った演出や音楽をふんだんに盛り込んだ作品とは一線を画し、ストーリーは極めて冷静に展開される。風圧で顔をゆがめながら疾走する場面、両手を振り回して子供のように無邪気に喜ぶ場面など、ホプキンスの自然体の演技がとにかく素晴らしい。

米国で一昨年12月に公開された際、前任地のロサンゼルスで封切り日に見た。マンローが記録を達成する場面で大きな歓声や拍手が起きたことをいまも覚えている。第2の人生を迎えようとする団塊の世代に勇気を与えてくれる傑作だ。

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