1981年にブロードウェイで上演され、トニー賞6部門を受賞した伝説的なミュージカルを映画化にした「ドリームガールズ」(ビル・コンドン監督)が17日に公開される。25日(日本時間26日)に発表されるアカデミー賞では最多となる6部門8ノミネートを果たしている。
3人組の女性歌手グループ「ドリームズ」の成功と挫折を描く。主役のひとりは女優業での活躍もめざましい歌手のビヨンセだ。
歌と踊りで観客を魅了するドリームズ。ダンスのリハーサルは撮影のずいぶん前から始め、それと同時にシェイプアップにも励んだという。
「監督と話し合って体重を10キロ落とそうって決めました。撮影まで3週間しかなかったから大変だったけど、食事を減らして運動をして、ダンスの練習もしながら落としました」
ドリームズは結成当時、エフィー(ジェニファー・ハドソン)がリードボーカルを務める。が、ブラウン管での成功をにらんだマネージャーのカーティス(ジェイミー・フォックス)は、美ぼうのディーナ(ビヨンセ)を前面に打ち出すことにする。
そんなディーナ像についてビヨンセは「複雑な人物で、オーバーなところがなくて、とてもミステリアスでエレガント。どんどん成長していく姿がとても美しい。初めはごく普通の女の子。眉毛は太いし体もふっくらしていて、髪型だってぼさぼさ。でも、だんだんチョウが羽ばたくように自立した女性へと成長し、自分を見つけていきます」
ビヨンセ自身に重なるサクセスストーリーだが、「私はディーナとはかなり違います。もう大人ですから、ディーナのように多くの選択を迫られることもありません。でもディーナは強い女性。商品のようにはなりたくないと思ったところは私も共感できます」と冷静に語る。
「(物語から)学んだことは友情。そして何事も起こるべくして起こる、ということ。苦労が人を成長させるのです」とも。
歌唱力には折り紙つきだが、自身のすべてを発揮すればディーナになりきれるわけではなかった。
「ディーナは私と正反対の歌い方で、とても楽しい経験だったわ。大声でさけんだり、ソウルっぽく歌うことはできませんでした。ただ、自分の歌を次にうたうときにどうなるかが気になります。ずっとディーナの歌い方になってしまうのではないかって。ディーナの魅力と繊細さを同時に表現するのは難しかったけど、とてもやりがいがありました」
さらに映画の魅力についてこういう。
「私のアルバムは米国内よりも海外での売り上げの方が多い。いい音楽、いいストーリーに人種なんて関係ない。これは私自身が世界中をツアーで回って経験したことです。夢をかなえたいという気持ちはだれもが共感できる。この映画を見ていると、自分もがんばればできるんだって素敵な気分になれます。それは普遍的なテーマではないでしょうか」
オスカーの助演女優賞にノミネートされている共演者、ジェニファー・ハドソンについては「大好き。素晴らしい歌声をしています。謙虚で優しくて本当にいい人。(ジェニファー演じる)エフィとは正反対。ジェニファーはだれにでも親切で、熱心に学ぼうとします。この映画は彼女にとってはデビュー作だから、今はとても大切な時期です。こういうチャンスが彼女に与えられたのは神様に祝福されている証拠。私にしても、あんなに優しくて才能のある人と仕事ができたことは幸せです」とべたぼめだ。
またオスカー俳優のジェイミー・フォックスについては「素晴らしい人。とてもプロフェッショナルです。でも普段はごく普通の人で、オスカー俳優だとか、大スターだってことを全然意識させません。優しくて、彼の周りでは笑いが絶えない。前向きだし、才能豊かだし。とにかくみんなが楽しそうで何かを学ぼうと一生懸命だから、現場にいるととても幸せででした」。
ビヨンセは、かつて「オスカーを獲りたい!」と語っていた。
「歌手がオスカーを獲るのはとても難しいこと。すでに歌手として成功しているのでそれで十分だとも思いますが、私はそれだけで満足したくはないのです。もっと上を目指して、本物のアーティストになりたい。きちんと評価されたいし、目指すからには真面目に取り組みたい。女優を始めて5年がたちますが、最後までやり遂げたい。私はそういう性格なのです」
すごい向上心。満足することはあるのか?
「もちろん。オスカーを獲ったらね!」