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米からリメークの依頼も
「悪夢探偵」 鬼才が描く都市と人間
1月12日(金) 東京朝刊 by 岡田敏一
他人の夢に入る特殊能力を持つ探偵が難事件を解決するスリラー「悪夢探偵」が13日から公開される。人間が突如、金属化していくカルト映画の傑作「鉄男」(1989年)で脚光を浴びた塚本晋也が監督・脚本・出演を兼ねた長編10作目。塚本は「米ハリウッドの複数の大手映画製作会社からリメークのオファーが来ている。今後もシリーズ化したい」と意気込んでいる。

映画「悪夢探偵」

都会の片隅で、ベッドで眠った状態のまま切り刻まれた血まみれの死体が立て続けに見つかる。被害者はいずれも死の直前、携帯電話に「0」と表示される人物と電話していたことが分かる。

刑事の霧島慶子(hitomi)は、「0」の発信者が携帯電話を通じ被害者に暗示をかけて自殺を促したと推理。さらに、事件に夢が深くかかわっていることを突き止め、他人の夢の中に入る「悪夢探偵」の影沼京一(松田龍平)に事件解決を依頼する。夢に入るのは危険なうえ、自ら自殺願望を抱えていた京一だが、慶子の強い願いを聞き入れ、「0」の発信者と接触を図る…。

塚本晋也監督(撮影・岡田敏一)

塚本は7、8年前から追求している「都市と人間のかかわり」というテーマを、これまでと違う角度から表現するために夢を取り上げた。「都会人の生活は人間らしさがインターネットに代表されるテクノロジーに侵されている。そうした都市と人間との精神的なかかわりを描くため、“夢”を選んだ」と説明する。

昨年から今年にかけ、こうした夢に焦点を当てた作品が目立つ。アニメ映画「パプリカ」は他人の夢に侵入する物語、アニメと実写を融合した米映画「スキャナー・ダークリー」は薬物乱用による幻覚や人格崩壊といった“悪夢”が題材だ。現実と仮想世界の攻防を描いた「マトリックス」3部作も、根底にあるのは仮想世界に取り込まれ、支配された人々の悪夢だった。

「幼いころから江戸川乱歩作品のような陰影のある探偵ものの大ファン」である塚本は、この作品のコンセプトを15年以上前から温めていたとか。それだけに「マトリックス」を見たとき、「あー。先にやられた」と感じたそうだ。

しかし、自殺願望を抱えながら、自殺志願者に死の恐怖を知らしめるべく、彼らの夢に嫌々入り込むという“ブラックユーモア的矛盾”をはらむ物語展開、そして映像表現の斬新さは世界に十分通用すると評価は高い。

「夢に侵入できそうなのは彼しかいない」という松田の神秘的でおぼろげな存在感が素晴らしく、hitomiの冷ややかな演技も作品の雰囲気にピッタリ。監督自身の怪演もすごい。すでに約40カ国から配給のオファーがあり、早くもハリウッドはリメーク権獲得に動いている。「今回は自殺願望でしたが、次回からは異なる題材でシリーズ化したいですね」

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