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変貌する裏社会描き出す
アジア映画「エレクション」ジョニー・トー監督に聞く
1月12日(金) 東京朝刊 by 岡田敏一
香港裏社会の権力闘争を描いた「エレクション」が20日から、東京・テアトル新宿で公開される。昨年のカンヌ国際映画祭で正式上映され、欧州でも高く評価された。ジョニー・トー監督は「裏社会の変貌(へんぼう)を時代の流れとともに記録する意味で撮った。この作品を見て、欲望から何が生まれるのかを知ってほしい」と熱っぽく語った。

ジョニー・トー監督(撮影・岡田敏一)

3世紀にわたる歴史と約5万人の構成員を擁する香港最大のマフィア組織「和連勝会」。2年に1度行われる会長選挙の今回の候補は、組織に忠実なロク(サイモン・ヤム)と、金もうけにたけているが荒っぽく、強引なディー(レオン・カーファイ)の2人。ディーは激しい買収工作を展開するが、最も信望の厚い幹部がディーのやり方を非難。結局、ロクが当選するが、ディー一派が報復を開始。血みどろの抗争が巻き起こる…。

トーは「中国返還以降、政治や文化、経済とともに大きく変貌する香港の裏社会を記録したかった」。真実に肉薄するため綿密に裏社会を取材したが、「ドキュメンタリー的手法に流れるのはあえて避けた」と話す。

こだわりは随所ににじみ出ている。ギャング映画の系譜だが、派手な拳銃(けんじゆう)の撃ち合いは一切なく、殴り合いが中心。色調も地味で、感情を爆発させるような芝居がかった演出も極力抑えたことで、かえって生々しいリアリティーを生み出した。

こだわりが生き、作品は一般社会にも通じる普遍的なドラマ性の獲得に成功した。「欲望から何が生まれるかを知ってほしい。取材では、裏社会のボス10人のうち9人は悲惨な末路をたどっていました。悪行には必ず報いが来るのです」

最近のハリウッド映画の低迷について、「ゲームやネットばかり楽しんで、じっくり本を読んだり映画館で真剣に映画を見られない若い人に合わせて作っているのだからハリウッド映画は見ごたえがなくて当然です」と冷静に分析する。ただ、映画の未来に希望は捨てていない。「映画という文化自体がどんどん浅くなり、映画館も激減するでしょう。ネットやテレビでの鑑賞が中心になるかもしれません。しかし、存在価値のあるものは形態が変わるだけで決して消滅はしませんよ」

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