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「輝く夜明けに向かって」
怒りが生んだ自由の戦士
1月23日(水) 東京朝刊 by 宝田茂樹
怒りに込められたパワーはすさまじい。怒りは人を変え、主義主張を変え、思想までをも変えうるのだろうか。

1980年の南アフリカ共和国。アパルトヘイト(人種隔離政策)下の日常で、主人公の黒人、パトリック・チャムーソ(デレク・ルーク)は家族をもち、炭田地帯にある大きな石油製油所で勤勉な現場監督として働いていた。アパルトヘイトに反対し、「ラジオ・フリーダム」を流して民族解放を訴えるアフリカ民族会議(ANC)のテロリストたちの暗躍は激しかったが、当初パトリックには政治的な関心がなかった。近所の少年を集めてサッカーチームのコーチをするなど、公私ともに満ち足りた生活を送っていたのである。

人生の転機というものは、だれにでもある。それは運命の扉に鍵を差し込んで回したときのように、かちり、という手応えとともに訪れる。しかし、開いた扉の向こうにあるものを正確に予測できる人は少ない。パトリックもそうだった。

無実の罪で逮捕され、拷問を受け、自白を迫られる。波紋は、愛する妻のプレシャス(ボニー・ヘナ)にも及ぶ。政府の政策を忠実に遂行しようとする公安部テロ対策班のニック・フォス大佐(ティム・ロビンス)との確執が鮮やかに描かれる。

だれもが正義のために戦い、自由のために死んでいく現実をこれほどリアルに描けたのは、パトリックが「自由の戦士」として南アフリカの歴史に名をとどめた実在の人物だからだろう。「輝く夜明けに向かって」(フィリップ・ノイス監督)は27日から、東京・有楽町のシャンテシネで公開される。

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