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見ごたえある全編デジタルの質感
「ゾディアック」実話の恐怖 殺人犯から届いた暗号文
    東京朝刊 by 岡田敏一
1960年代末から70年代後半、米西海岸を中心に発生した未解決の連続殺人事件を題材にとった映画「ゾディアック」(デビット・フィンチャー監督、16日公開)。事件の特異性や社会に与えた衝撃に加えて、犯人を執拗(しつよう)に追い続けることで家庭や人生を破滅させてしまう間接的な“被害者”たちの人間ドラマも丹念に描いた重厚な大作だ。

連続殺人犯を追う風刺漫画家の役を演じたジェイク・ギレンホール(右)
連続殺人犯を追う風刺漫画家の役を演じたジェイク・ギレンホール(右)

69年7月、サンフランシスコ近隣の街バレーホで若いカップルが拳銃(けんじゅう)で撃たれ女性が死亡する。事件から約1カ月後、ゾディアックと名乗る男が地元紙に犯行声明と謎めいた暗号文を送りつける。「暗号文を掲載しなければ連続殺人事件を起こす」。要求通り暗号文が掲載され、事件は米社会を揺るがす。

この地元紙の花形記者(ロバート・ダウニーJr.)、見習いの風刺漫画家で原作者のロバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)、サンフランシスコ市警の刑事(マーク・ラファロ)の3人は暗号文の解読と犯人の追跡を続けるが、犯行や挑発は激しさを増す…。

グレイスミス役のギレンホールは「事件のことは全く知らなかったが、草稿を読んで、ゾディアックがわれわれに与える恐怖や登場人物のリアリティーは現代でも十分通用すると確信した。これが実話だとは。ホントに驚きだった」と話す。

事実を丹念に積み重ねて、ドキュメンタリーを超える重厚な物語に再構築した監督の手腕には恐れ入る。目がくらむ程の情報量。劇場型犯罪とメディアとの深い関連性も描き出される。知恵と執念で犯人に肉薄するまでの過程はスリルに満ちた知的冒険で、約2時間40分の長尺があっと言う間だ。

監督が初めて挑んだ全編デジタル撮影だが、ギレンホールは「彼の映像感覚はいつも先端を進んでいる。特に本作の映像は非凡な出来栄え」と絶賛する。ハリウッドでは「本作を機に全編デジタル撮影に挑む監督が増えている」(米業界筋)という。夜のフリーウェイを飛ばす車の運転席のシーンなど、フィルム撮影にも劣らない微妙な陰影や質感にも注目してほしい。

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