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情熱と誠実、役に傾け
「アヒルと鴨のコインロッカー」俳優、瑛太に聞く 
    東京朝刊 by 岡本耕治
浅野忠信や妻夫木聡らと出演したNTTドコモのCMが評判。23日には濱田岳と共演した伊坂幸太郎原作の「アヒルと鴨のコインロッカー」(中村義洋監督)が公開される。

俳優・瑛太(撮影・小松洋)

明るく、ひょうひょうとした人物を想像していたが、目黒のスタジオに現れた本人は非常にまじめな性格で、話し下手。こちらの質問を真剣に受け止め、考え込む。答えが返ってくるのに時間はかかるが、その言葉は誠実そのものだ。

あまり詳しくは書けないが、瑛太が演じた“河崎”役にはかなり複雑な設定があり、そのために原作小説は「映像化不可能」と言われていた。しかし、セリフや表情の一つ一つに細心の注意を払った演技で見事に“河崎”に生命を吹き込んだ。

「脚本を読んだとき、設定や演じることの難しさよりは、彼の抱えたさびしさとか復讐(ふくしゅう)心の方にひかれました」

この作品は、恋人を殺され、失意の底に沈むブータン人のドルジと、彼を見守る“河崎”の姿を、偶然同じアパートに引っ越してきた椎名(濱田岳)の視点で描いている。

物語にはボブ・ディランの曲が印象的に使われる。瑛太の最初のセリフは「風に吹かれて」を歌う椎名に語りかける「ディラン?」という言葉だ。このシーンがラストでもう一度繰り返される。観客は、何気ないセリフにこめられていた万感の思いに気づいて衝撃を受ける。もう一度映画を見れば、冒頭のシーンだけで泣く人もいるに違いない。

「観客に気づかれないように、もっと自然に演じる手法もあったけど、ぼくは“河崎”の本当の姿を最初から出したかった。観客はぼくの演技ではなく、映画の構成にだまされる形にしたかったんです」

切なくて、どこかユーモラスな物語。公開前から評価は高く、原作者の伊坂も大絶賛した出来栄えだ。

高校在学中にスカウトされたことがきっかけで俳優となった。

「ぼくはだらしなくて、アルバイトも長続きしなかった。何をすればいいか分からなくて、この世界に入ったんです」と笑うが、演技の道は天職だったようだ。

「ときどき、役になりきれる瞬間がある。そいつの動きやクセ、セリフが自然に自分の中から出てくる。そんなときは芝居って面白いなあ、と思いますね」

演技への熱い思いをぽつりぽつりと語る姿には、打ち込むべき何かを見つけた青年の喜びが満ちていた。「アヒルと鴨のコインロッカー」は代表作のひとつになることは間違いない。さらなる飛躍に期待が持てそうだ。

水性ボールペンにこだわり
「文具を買うのが趣味」という瑛太の最近のお気に入りが、この水性ボールペンだ。1本100円の、誰もが目にしたことがありそうな、ありふれたペン。発売は昭和47年というロングセラー商品だ。

俳優・瑛太(撮影・小松洋)
俳優・瑛太(撮影・小松洋)

「学校の先生がよく使ってましたよね。ぼくのマネージャーが愛用者で、借りてみたらペン先の太さと書いたときの柔らかいタッチが独特で、気に入ったんです」という。

実際にさらさらと文字を書きながら、「ほら、水性だから文字が微妙ににじむでしょ。でもこのにじみ具合がいいんですよ」とうれしそうに説明する。いつも黒と青の2本をセットで購入し、持ち歩いているという。

記者のひとりごと
「最近、マージャンを覚えようと思っている」という。

「実はぼくはオセロが相当に強いんですよ。でも、みんなオセロやらないですよね。『毎晩コンピューターやネット対戦で10回はやってる』なんて言うとぽかーんとされるし、『オセロやらない?』と誘っても、鼻で笑われるだけ。たまに相手がいても、ぼくは相当やりこんでいるので、絶対勝っちゃう。微妙な駆け引きが楽しめない」

そこで、競技人口の多いマージャンに転向しようと、携帯ゲーム機のソフトを買ってみた。

「だけど、何か面白くない。気が付くといつの間にかオセロをやってるんですよ」とため息をつく。

うーん、無理にマージャンを覚えるより、いっそのこと、オセロの普及に情熱を傾けるというのは、どうだろう?

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記事関連情報
【プロフィル】瑛太
えいた 本名は永山(ながやま)瑛太。昭和57年、東京都出身。平成13年のドラマ「さよなら、小津先生」、映画「青い春」などで俳優活動を開始する。その後、ドラマでは「アンフェア」「のだめカンタービレ」など、映画は「電車男」「嫌われ松子の一生」などに出演し、人気を集める。17年の「サマータイムマシン・ブルース」で初主演を果たした。来年1月には主演作「銀色のシーズン」が公開される。










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