世界的に大ヒットしたアニメ映画シリーズ第3弾「シュレック3」(クリス・ミラー監督、30日公開)。米では予想通り大ヒットを記録中だが、パロディーの毒は幾分弱まった。シリーズの生みの親でドリームワークスアニメーションSKGのCEO(最高経営責任者)ジェフリー・カッツェンバーグ(56)は「あえて作風を変えた」と自信たっぷりに語った。
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世界的に大ヒット中の「シュレック3」だが、前作、前々作より毒は薄め |
ディズニーで「美女と野獣」や「ライオンキング」などを大ヒットさせたが、当時の同社トップに疎まれて左遷。退社してスティーブン・スピルバーグらとドリームワークスSKGを設立し、アニメ部門の責任者に就き、世に送り出したのが「シュレック」(2001年)だった。“打倒ディズニー”を旗印に、「美=善、醜=悪」というディズニー的な価値観を徹底的にパロディー化し、アニメ映画の常識を覆した。
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ドリームワークスアニメーションSKGのジェフリー・カッツェンバーグ |
2作目(04年)ではブラック・ユーモアやパロディーがパワーアップ。物語の舞台となる王国「遠い遠い国」の目印はハリウッド・サイン、町並みはビバリーヒルズにある超高級ブランド街「ロデオドライブ」のパロディーという具合に、ネタになるものはすべて笑いにした印象があった。
そして本作。見かけは不細工だが心のやさしい緑の怪物シュレックと、緑の怪物で何が悪いと開き直っているフィオナ姫。前作で無事結婚した2人だが、フィオナの父である国王の死で、シュレックが国王の座を継ぐことに。それが嫌なシュレックは、とある魔法学校に通う別の王位継承者の高校生を探しに旅に出る。そこで、前作で姫にフラれたチャーミング王子がおとぎ話の悪役をそそのかして反撃に…。
が、パロディーの切れ味はやや鈍い。肝心な時に睡魔に襲われる眠れる森の美女や、長年受けたイジメのトラウマで掃除癖が直らないシンデレラには笑えるが、目新しいネタは「ハリー・ポッター」くらいだ。
「過去の作品では米のポップ文化的ジョークをちりばめたけど、シュレックも結婚するなど成長を遂げているんで意図的に作風を変えたんだ」とカッツェンバーグ。
ディズニー的価値観のパロディー化については「今の女性は王子様に助けてもらうのを待ったりしないだろ?」と笑う。政治ネタも「時代が限定され、タイムレス(時代を超えた)な笑いが提供できなくなる」とあえて外したそうだ。
米では5月に公開され、約2億9800万ドル(約360億円)を稼ぎ、今年公開のハリウッド映画では「スパイダーマン3」に次ぐ2位を記録している。毀誉褒貶(きよほうへん)の多いカッツェンバーグだが、クリエイターとしては傑物だろう。
最近の米のエンタメ業界では、株主の意向を気にして挑戦を避ける企業経営者が多いといわれる。カッツェンバーグは、企業経営者として「わが社は株主ではなく映画ファンのために映画を作ってるんだ」と語る。
そういえば「金をもうけるために映画をつくるのではなく、映画をつくるために金をもうけるんだ」と言ったのはウォルト・ディズニーだった。